甘々と稲妻 11 / 雨隠ギド

 

甘々と稲妻(11) (アフタヌーンKC)

甘々と稲妻(11) (アフタヌーンKC)

 

 この巻は、というかこの作品は、もう小鳥の告白シーンに尽きるでしょう。

小鳥が卒業することで、犬塚先生との関係は何かしらの決着をつけなければいけない時期が来ていて、話の流れ的にも帯の煽り的にも、そういう方向なのかなって邪推した自分が申し訳なくなるこのね、本当にね。でも明らかにミスリードしてるし……。

小さな女の子といっぱいいっぱいだった父親、そしてトラウマを抱えた少女。彼女たちが出会って、一緒にご飯を作って、食べて、そうして大切な時間を積み重ねてきて、小鳥が伝えたかった想い。何が好きで、何が嬉しくて、何が大切だったのか、その全てがあの言葉と表情に集約されていて、あまりの尊さでぼっろぼろ泣きました。先生の返しがまた本当に素晴らしくて、いや、尊い……。

だからこそ、卒業式、小鳥の家の改装休業と、終わりに向かっていく時間の寂寥感が大きくて、そこにつむぎのアルバムが出てきたらもう泣きますよね。3人と周りの人たちが積み重ねてきた時間と、あのつむぎがこんなに大きくなった姿に、読者としてもこれがどんなに大切なものなのかを噛み締めさせてくれるようなシーンでした。素晴らしかった。傑作、だと思います。