【小説感想】走馬灯のセトリは考えておいて / 柴田勝家

突飛なアイデア文化人類学的なアプローチで迫るSF短編集。

表題作の「走馬灯のセトリは考えておいて」が凄かったです。人々がライフログを残し、それを基に受け答えまで可能な故人のライフキャストが作られるようになった時代。ライフキャスト作成の仕事をしている主人公は、かつてバーチャルアイドルの中の人だった老人から、バーチャルアイドル黄昏キエラのライフキャスト作成、そして彼女が死んだ後のラストライブの依頼を受けて、という話。

「バーチャル」で「アイドル」で「死人」であるという虚飾に虚飾を重ねた存在に、魂の形を見出す祈りのようなセンチメンタリズムが鮮烈でした。バーチャルアイドルの中の人だった彼女がその姿に何を託していたのか、ライフキャスターである主人公の父親にまつわる秘密、全てに虚実が入り混じり、精神性の神秘は剝がされて、生死の境界さえ曖昧になりつつある世界の中で、それでもそこに祈りはあるんだなというか。故人のライフキャストが故人のライフキャストのアイドルとなる空間は、薄皮一枚で虚無の広がる恐らくは正しくないものであって、けれど私たちはそこに祈ってしまう。それは論理的には間違っていると分かっていても、信じることで見えてくる光がある。まさしく、信仰の形をした物語だったと思います。推しという信仰を持つ人に読んでもらいたい短編でした。

他の短編では「クランツマンの秘仏」が最高でした。信仰が対象に質量を生むという、はじめはある種の冗談だった説に取りつかれた東洋美術学者をめぐる異常論文。私が狂った話を大真面目に語るのが好きなのもありますが、第3者の視点である程度の客観性を持って語られるが故の迫力があったと思います。そしてこれも「信仰」が何かを生み出すというアイデアなので、表題作とテーマを同じくしているんだなと。

2022年の振り返り その2(映画・アニメ・ドラマ・小説・マンガ・音楽)

今年の映画・アニメ・ドラマで良かったのは何だろうなと思うと、やっぱり「すずめの戸締り」なんじゃないかと思います。新海誠の集大成にして最高傑作の看板に偽りなしの作品で完成度が高く間口も広く、そして何より失われていく世界に生きる物語なこと、そしてその中ですずめを何が救うのかがとても良かったなと。

あと、あまりに秘密主義過ぎて様子見していたものの評判の良さに映画館に足を運んだ「スラムダンク」が最高のスポーツエンターテイメントというものを見せてくれて凄かった。原作者の頭の中にだけあったものが、原作者が陣頭指揮を執ることで映画として顕現したという趣の作品でした。

他に映画ではうたプリの映画が映画=ライブ作品の最高峰のクオリティだったのと、滅茶苦茶分かりやすくなったが故に宗興みの増したピングドラムが印象に残った感じ。「シン・ウルトラマン」はメフィラスが最高だった。

 

そしてそのメフィラスこと平六の出る「鎌倉殿の13人」が滅茶苦茶に面白かったです。大河ドラマを見るのなんて何十年ぶりとかで、これも大変に素晴らしい出来だったアニメ「平家物語」と併せて見ると平家と源氏の両面から見られて良いと聞いて見始めたものでしたが、三谷幸喜は本当に凄かった。

粛清粛清&粛清の地獄のような鎌倉とちょっととぼけたギャグの塩梅の良い大河ドラマなのですが、史実を下敷きにしているのに、その隙間を膨らませながらそれぞれの登場人物がそれしか取り得ない行動を選択する結果として関係性と事件が編まれていくのが、どうやったらこんなものが組みあがるのかと。冒頭から通底する北条家のファミリー・サーガとしての一面が、紆余曲折を経て最終盤の政子と義時の選択と行動に繋がってくるのが凄みを通り越して怖ささえありました。登場人物の存在がブレてないというか、こういう人たちがこういうふうに生きた結果としての納得性と史実であることの担保をしながら、その上でこれ以上ないシーンがバチバチに決まって来るの、大河の尺があるからできる、もの凄いドラマだったと思います。毎週地獄が過ぎてみるのが辛いんですが、それを超える面白さがあって、本当に最後まで見続けて良かったです。

それとNHKは、70年代に存在しなかったはずの特撮番組を生み出して現実を侵犯する「タローマン」も狂った企画で面白かった。「タローマン ヒストリア」に至ってはこうやって人を洗脳していくというカルトの手口みすら感じて怖かったです。なんにしても今年は放送料のもとは十分にとったと思います。

 

アニメだと、あの地獄のようなイルぶる編を見事にアニメにした「メイドインアビス」も凄かった(久野美咲のファプタがやばかった)ですし、人気の出た作品はやっぱり面白いんだよなと「SPY×FAMILY」「水星の魔女」「リコリス・リコイル」「異世界おじさん」などを見ていると思うのですが、鮮烈なインパクトという意味では今年は「アキバ冥途戦争」しかないでしょう。

アキバのメイドに極道を重ねて、メイド喫茶間での抗争とそこで生きるメイドたちの生き様を描く作品という時点で既に狂っているのですが、1話からぶっ飛んだギャグと血と暴力とメイドが混然一体となって、最初はいったい何を見せられているんだと。ただ、何話か見ているうちに引き込まれて、任侠ものとしての側面がフルスロットルになる6話辺りから加速して、最後までノンストップで駆け抜けた感じでした。

特に11話に暴力の行き着く先、因果が巡る任侠ものとしての最終回を持ってきて、その暴力を萌えという非暴力で塗り替えるための12話最終回の二段構成になっているのが凄まじい構成。最終話なんて、普通に見たら気が狂ったような絵面が延々と続くのですが、それは作品のテーマもキャラクターの生き様も完璧に描き切った結果として出力されたものだと理解させられるので、頭がおかしくないと出来ないわこのアニメと圧倒されました。任侠の生き様とメイドの生き様を描くのは、アイドルの生き様を描いたゾンビランド・サガのサイゲの企画だなあという感じで、万人に刺さるか分からないですが、気になる人は最終話まで見て欲しいなと思います。1話だけ見てもなんだこれだと思うので……。

 

あとは、今年の小説だと「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」が身体性を突き詰めて人間性というものを削り出すような執念を感じる一冊で凄かったのと、「ゴジラ S,P」がアニメとは別視点の断片を集めたような変な小説だけど読んでいると滅茶苦茶面白いという不思議な読書体験だったのが印象的。あと「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 2」が良いスペース漁業SF百合でした。「少女を埋める」は、生きるためには声を上げなければならないという覚悟を描いた短編に対して、まさにそういう声を上げざるを得ない書評が来たことで、「やるんだな、今ここで!」となるメタフィクションめいた勢いのある一冊で、なんというか、ある種凄かった。

 

マンガだと「メダリスト」がまあもうとにかく図抜けて面白いです。フィギュアスケートに詳しくなくても競技会はものすごい面白いですし、練習も描写も面白くてもはや無敵。この熱量と繊細さでこのペースで連載して身体壊さないでくださいねと余計な心配をしたくなるような作品です。最高のクオリティでアニメ化してくれ。

あとは連載を追いかけることで得られるドライブ感が最高だったのは「タコピーの原罪」。体験として強かった。ジャンプ系だと「株式会社マジルミエ」がお仕事もの×魔法少女で新人作とは思えない完成度なのでこの先も楽しみ。あと、「鍋に弾丸を受けながら」は脳がやられているためすべての人間が美少女に見えるというパンチのきいた設定もありつつ、世界をめぐるグルメマンガとして面白かったです。

あとアニメ化も決まったU149は相変わらずキャラクターの描き方が冴えに冴えていて最高です。アニメはマンガの通りにはやら無さそうなので、期待値は下げつつ来年の楽しみにはしていきたい所存。あと、せっかくアニメにするんだから書店流通だけ何とかしろサイコミって思い続けています。

 

音楽だとアニメとのマッチングも含めて「花の塔」「かたち」「祝福」が良かったなあと。それから毎回EDが変わる話題性もあったチェンソーマンの「KICK BACK」「first death」は米津天才だなあ、TK天才だなあと感じる曲でした。あとリメイクされたうる星やつらの「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」がめちゃめちゃ良い曲で、レトロポップな世界観にも合っていて良かったです。

それとアイマス系でミリオンの「Clover’s Cry」がなかなかぶっ飛んだ曲で凄く好き。シンデレラだとナターリアの「ソウソウ」とユニ募の「UNIQU3 VOICES!!!」が明るいのにエモくて良き。

アルバムだと緑黄色社会の「Actor」が良いアルバムだったなあと思います。凄くスタンダードで、個性もちゃんとあって、凄く聞きやすくて魅力的。あとキャラソンでPhoton Maiden「4 phenomena」がコンセプトが明快で凄く良かったです。

2022年の振り返り その1(ゲーム・ライブ・スポーツ観戦)

今年はなかなかブログを書く時間も取れなかったので、年末くらいはちゃんと記憶を残しておこうかと思い振り返ってみます。

 

しかし今年は本当に仕事が大変でまあ酷い状況で、精神的にもギリギリの状況が続いたのですが、そんな中でも安定剤になっていたのがゲームでした。仕事するかゲームするかみたいな一年というと少し言い過ぎかもしれませんが、おおよそそんな感じ。

GW頃に「ゼノブレイド Definitive Edition」を初めて、そのあと「ゼノブレイド2」、更には今年発売の「ゼノブレイド3」まで一気に駆け抜けて300時間弱。モノリスソフト作品としてはゼノサーガから隔世の感を感じる非常に出来の良いRPGで、何時間でもずっと遊んでいられて、世界観に没入して仕事のことを忘れられるのが特に良かった。本当に救われてた。

1~3までやってゲームとしての完成度なら間違いなく3ですが、設定的な取っつき辛さがあるので、全体的に上品でお勧めできるのは1(DE)という感じ。でも個人的なストーリーの好みは2。オタクなら好きでしょこういう展開っていうのを重ねに重ねてくる終盤の引きの強さと、追加コンテンツ「黄金の国イーラ」をやることで本編が違った角度で見えてくるところが非常に良かったです。来年出るはずの3の追加コンテンツも滅茶苦茶楽しみ。エンディングに色々と納得できないところがあったので、その辺りもひっくるめて回収されるといいなあと。でもやるとしたら過去編かなあ。

 

あとは自分でもちょっとびっくりするほど、特に今年前半の記憶が飛んでるのですが、ちょっとずつ思い出しながら振り返りを。

仕事とゲームの代償に配信含めてもここ10年で一番見る数が少なかったライブ/イベント。というか単純に業界の趨勢として配信が少なくなってくる中で、なかなか現地まで足が戻らないというのが正直なところで。行けばもちろん楽しいのですが、リモートワークが常態化したこともあってとにかく人混みに激弱になっており、リハビリが必要だなという気持ちと、このまま自然減していくのかなという気持ちが相半ば。私のこの10年の人生の中心は間違いなくアニソンライブだったのですが、果たしてそれが無くなってどうするのかというのは課題ではあり。

そんな中でもやはり今年1のライブはシンデレラガールズの10thファイナルでしょう。出演者オールシークレットというシンデレラしかやらない狂ったライブで10年分の全部をぶつけられたらもうね、走馬灯が見えるよねという。ああ私は10年このコンテンツ追いかけてきたんだなという実感と、追いかけて本当に良かったなという感動が、「ココカラミライヘ」~「always」の流れに凝縮されていました。あれはもう体験として、追いかけてきたからこその得難い瞬間で、あの場に入れて本当に良かった。くそ寒かったけど。更にcg_ootdで的場梨沙ソロが披露され、シンデレラについてはかなり老後感が強くなってもいるのですが、ライラさんについに! ボイスが! 総選挙で! ついたのでまだしばらく追いかけ続けることにはなりそうです。あとはコンステは野心作だったけど、仕掛けが全部上手くいっているとは言いがたかったかなあとか。

それから行ってよかったなあと思ったのはRAISE A SUILENの有明アリーナ。RASはJapanJam、サマソニも追いかけたのですが、単純にライブがめっちゃ楽しい。あと会場が綺麗で見やすい。RASは贔屓目を除いてもパフォーマンス力がちょっと凄いところに来ているので、バンドリだからとかそういう枠から外れた活動がもっと増えていくのかなと思います。いや本当に、ライブが凄いので。

そのRASを見に行ったJapanJamは非常に良いフェスで来年も行きたいと思いました。何より野外フェスには季節がちょうどいい。天気も良かったので後方でぼんやり座ってステージを眺めているだけでも気持ちが良く最高でした。ステージ間の移動も少ないちょうどいい規模間で、それでいてなかなかのラインアップが出演するのも本当にちょうどいいフェスという感じで大変好印象でした。SUPER BEAVER良かったなあ。

それから久しぶりに行ったアニサマはやっぱり完成度の高いフェスで絶対に楽しいというクオリティなのが良かったのと、あとナナヲアカリのライブが良かったです。

ナナヲアカリというキャラクターと、生身のナナヲアカリという人間を行き来するような所があって、その見えないはずのところが見えるようなギャップにハッとさせられたというか。あるとても私的な出来事をMCで話してからの「陽傘」が、ちょっとあまりに刺さって、素晴らしかったなと思います。やっぱりナナヲアカリと言えば「ダダダダ天使」みたいなキャラクタライズされた魅力ではあるのですが、こういう見せ方もできる幅があるんだなと驚いたライブでした。

 

ライブではないのですが、現地観戦という意味ではふと思い立って現地に足を運んだ新日本プロレスの5・26 BOSJ後楽園ホール大会も印象深いです。プロレス、コロナで歓声が禁止になってから、配信で見ているとやっぱり寂しさというか熱気が感じられないと思うところがあったのですが、現地だと声には出せないけれど、息遣いとか拍手足踏みからでも溢れ出す熱気みたいなものを感じられてああそうだこれだと。ロビー・イーグルスvsエル・ファンタズモのメインが凄い試合で、多分配信で見ていたらシリーズの中の良試合で終わっているのでしょうけど、現地で見たからこそ一生忘れない試合になったところがあって、やはり現地観戦って特別だよなと思いました。あと後楽園ホール、非常に見やすくて流石聖地と呼ばれる会場でした。

スポーツ関連ではワールドカップも日本のジャイアントキリング2連発が面白かったですし、F1もチャンピオン争いはレッドブル/フェルスタッペンの独走でしたが、俺たちのフェラーリの迷采配が連発されるエンタメ的には点数の高いシーズンだったと思います。いやそんなことある!? って何度思ったことか。阪神は、まあ序盤の躓きが全てで、良い選手は出てきているので来年頑張ってほしいところ。ただ、岡田監督で時計の針を戻して本当に良いのかなあというのは正直思ってはいます。

 

長くなってきたので、続きはエントリを分けて。

【ゲーム感想】ゼノブレイド3

大変面白かったのですが言いたいことがあるというか、具体的にはサブクエストやヒーロークエストが滅茶苦茶面白くて、それ故にメインストーリーのラストにどうしても納得がいかなくなるという、なんとも難しい気持ちになるゲーム。でも出来は間違いなくシリーズで一番です。クリア後のクエストまで全部潰して122時間、存分に楽しませていただきました。

 

何を書いてもネタバレを避けようがなかったので、以下ネタバレありで。

 

 

 

 

 

 

 

1の世界と2の世界が一つになったようなアイオニオンという世界で、人々は10歳程度の身体で生まれてきて、10年間の限られた命を戦争に明け暮れるという設定。1の世界の人々が属するケヴェスと2の世界の人々が属するアグヌスという国に別れての戦いは、命の灯時計と呼ばれる装置に相手の命を捧げないと生き続けられないという制約を課されて終わることなく長い長い間続いており、たとえ10年の時を生き抜いたとしても女王の前で天に帰る成人の議を迎えるだけという、どう考えても酷い世界が舞台です。

そんな戦場で出会ったケヴェスの兵士ノア、ユーニ、ランツとアグヌスの兵士ミオ、セナ、タイオンはある出会いからウロボロスと呼ばれる存在になることで闘い続ける運命から外れ、アイオニオンという世界を支配するメビウスたちからの解放を目指して旅をするというのが大まかなストーリーライン。

この世界は何がどうして生まれたのか、メビウスとはいったい何者なのか、メリアやニアにしか見えない女王は何なのかといったたくさんの謎を抱えたまま進むストーリーですが、まずはパーティーメンバーの6人がいい奴らなのが冒険をしていて良いところ。大学のサークルみたいなノリで旅をしている感じが楽しいです。イベントシーンもですが、休憩ポイントで入る日常描写がいい味を出しています。

全体的な雰囲気としてはベタベタにアニメノリをしていた2から、ぐっと落ち着いた雰囲気になっていてその点間口は広がった感じ。ただ、世界設定の特殊さと、大きなテーマになってくる「命」が、10年を闘うこと=生きることのケヴェスやアグヌスにおいては普通の感覚とはズレているところもあって、のみ込みづらいところはあると思います。特にシティーで「普通」の人生を送る人々が出てきてからは、この感覚のすれ違いが味になっているところもあったりしますし、この前提をどれだけ受け入れられるかで、ストーリーに入り込めるのかが決まってくる感じはあるので、取っつきづらさはあるゲームと感じました。

 

このゲーム最大の魅力は、アイオニオンに点在するコロニーに配置された大量のクエストと、そこの軍務長が仲間になるヒーロークエストだと思います。メインストーリー上は必須ではないものですが、これがまたものすごい大量に用意されていてしかもどれも魅力的です。最初はこんなに数があってキャラクターも多くて覚えられないよと思っていたのが、気が付くとみんなに愛着が湧いているので凄いと思います。

アイオニオンの人々は10年を闘い続けることだけのために生まれてくる。なので、最初はそういった価値観だけをもって戦って死んでいく存在だと思っていたのです。序盤のノアたちの周りの描写もそういうイメージですし。だから、コロニーを命の灯時計から解放して、逆にそんなことをしたらこの人たちはどうやって生きていくんだろうとさえ思っていたのですが、色々なコロニーを解放してくると違うんだということが分かってきます。どのコロニーだって同じものは無く、同じ価値観の同じ人がいるのではなく、たった10年の人生をそれぞれに考え、色々なことに挑戦しながら前に進もうと生きている。ヒーロークエストを通じてコロニーや軍務長たちの人となりを知り、数々のクエストやヒーロー覚醒クエストを通じて、彼ら彼女らが抱えた問題にどう対処したり、他のコロニーとの連携を取るようになったり、何を抱え何を目指して変わっていくのかを見届ける。それは、アイオニオンというモノクロのイメージの世界が色づいていくような、ここにも確かに生きている人たちがいて、営みがあるのだということが実感として刷り込まれていくような感覚でした。気が付けばもう滅茶苦茶に愛着が湧くわけですよ。

そしてまあそれだけに、メインストーリーのエンディングにちょっと言いたいことがあるというか、アイオニオンは確かに成り立ちの良くない、2つの世界の消滅前の瞬間を永遠にして生まれた、メビウスの支配から逃れられない世界ではあるけど、本当にそれしかなかった??? みたいな気持ちがですね。未来へ進むために必要なことは分かるけど、この世界を搾取で成り立つ停滞でしかないと断じて信じて踏み出す必要性も分かるんだけど、他にやりようなかった? って思うのです。だって、こんな酷い世界の中でも、みんな確かに生きているってことをあの大量のクエストの中で体感してしまったんですよ。世界を消して元に戻しますかっていう問いに、たとえイエスというのが正しかったからといって納得できるのかというね。

このやり口自体はイーラでもやられたなあと思いつつ、あれはそういう悲劇だった訳で良くはないけど良いのですが、今回は未来への正しい選択として、愛着の湧き切った世界を消すことを求められるのがどうしても飲み込めないなあという素直な感想があります。ゼオンが苦労して育てて布教を始めたイモは? 幾度かの学級会を経てようやく立ち上がり始めたコロニーミューは、育ててたアルマたちは? ルディはドルークまた作るんじゃなかったの? エセルを失ってもようやく一つにまとまって進み始めたコロニー4は? ナギリ達に名前を付けてあげて刑務所改装してコロニー0はこれからっていう時じゃんだとか。

いやまだコロニーは、兵士が補充されなくなればどのみち10年で滅んでいたし、オリジンによる再生で元居た場所で再び生きていくのだと思えなくも、なくもない。死生観という面では、死亡して再生された後の同じ人物に記憶の連続性が無くても同一性を見ている気があったので、そういうものなのだと思えなくもない。……けどシティーはダメでしょう。オリジンからの再生ではなく、アイオニオンで生まれた命である以上、世界の消滅と再生を経ても元の世界では消えてしまう訳で、大恩あるシティーがそうなることを是とすることはできないでしょ。シティーの人たちはそうなるためにメビウスと闘ってたっていうのかと。だってじゃあ来年の料理コンテストはどうするんだよ、ジャンセンのモニカへの告白は、ロメロとジュリエッタは、子供たちはどうなるんだよ、この戦いが終わった先のことを話していた人たちはどうなっちゃうんだよ、だったら保守派の言う通りだったんじゃないのか等々、こう大分いろいろ言いたいことたくさんありましてね……。

いやそもそも、あれだけ大団円で終わった1と2の世界がぶつかって対消滅しますって言いだした時に誰か止めなかったのかと言いたくもあり。いやまあメインストーリー面白かった、面白かったんですが。捕らえられてからミオの成人の議のところの6話らへんの流れ、エヌとエムの辺りの話は素晴らしかったですし、終盤へ向けての盛り上がりもちゃんとあるし。だけどなあ、でもなあという、何とも言えない気持ちの残るお話でした。追加ストーリーでみんな救われるトゥルーエンドくれないかな、2の豪快なハッピーエンドを実現したシリーズなんだからそのくらいやってくれないかなと、期待だけしていようと思います。

あとメリアとニアは前作プレイしている人にはうれしいお楽しみ要素でした。メリアちゃんは流石の威厳を見せていて、ニアは柄にもなく無理しているところとボロが出るところが可愛かった。最終決戦の二人の頑張りと、エンディングでニアに駆け寄ってきたハナは前作やっていった人だけの感動ポイントだったかなと思います。ニアに関しては、見た目があんまり変わっていないので(マンイーターで長寿なので)、子供いるの??? っていう驚きが例の写真でありましたが。

 

 

ゲームシステム的には2、DEをベースにチューンした感じで、過去一遊びやすいですし、本当にストレスなく遊べるのでやり始めるとついつい止まらなくなります。シリーズの特徴であるマップも過去最大に広くて探索しがいがありますし、マップが踏破で埋めていく方式なのもやる気が出るポイント。クエストも一個ずつの内容や長さがちょうどよくて、何しろ本編上は寄らなくても良いコロニーがたくさんあって、それぞれに膨大なクエストが用意されてそれぞれの物語があるのが良かったところです。

バトルシステムはいい加減にやっていてもなんとかなるけど、クラスとアーツの組み合わせが無数にあって戦略を考えて詰めればいくらでもやり込める作りで良き。クエストをやり過ぎて適正レベルをずっとぶっちぎっていたのでバランスは何とも言えないのですが、ただ殴っているだけでも闘っている感じと達成感があるので飽きが来ないものになっていたと思います。

今回は笛の音をフューチャーした音楽も相変わらず良いですが、「命を背負って」はもっといろいろな場面で聞きたかったのと、ボス戦BGMの記憶が大体全部チェインアタックに塗り替えられるのだけちょっと不満ではありました。

 

 

そんな感じでいろいろ言いたいことはあるのだけれど、とにかく120時間以上最高に楽しめたというアンビバレンツな感想の残ったゲーム。あとは追加コンテンツのストーリー待ちですが、「繋がる未来」も「黄金の国イーラ」も素晴らしい出来だっただけに、期待をしていたいと思います。

【映画感想】すずめの戸締り

新海誠の集大成にして最高傑作と大見得が切られていますが、その宣伝文句通りの映画でした。傑作と思います。

「君の名は」「天気の子」でも描かれていた災害というテーマを今回は3.11を直接大向こうに回して描きながら、家出娘と動く椅子のロードムービーで、人知れず異界からの災いを封じる伝奇もので、親代わりの叔母と姪の関係を描いたもので、突然の出会いから始まるガールミーツボーイでもある作品。それだけのものが詰め込まれながら一切淀みなく流れていくストーリーに、新海作品らしい美しい風景描写、適度にジブリ風味を加えてくるあざとさまで完璧にコントロールされていて、完成度の高い映画になっています。それでいて、全2作を踏まえないとこれは作れなかっただろうと感じさせるので、ああいうキャッチコピーを掲げたくもなるだろうと。

新海作品ってどうしてもこういうものを描きたかったみたいな癖と業を感じるところがあって、個人的には「天気の子」がそこがピンポイントに刺さって大好きなのですが、今回はそういったものが綺麗に昇華されて一つの映画になっているので、もっと間口が広く受け入れられそうに思います。「天気の子」が興収100億と言われるとどうした? って思いますが、「すずめの戸締り」はそのくらい行くよねと思える出来なので、震災がテーマということで難しいという人以外は見て欲しいなと感じる映画でした。

 

 

 

あとはネタバレありで。

 

 

パンフレットや配布冊子を読んでなるほどと思ったのが、ポストアポカリスものとして作りたいという言葉。「君の名は」は起きてしまった災害を無かったことにする話で、「天気の子」は災害を前に大切な人とどちらを選ぶのかという話。でも「すずめの戸締り」は決定的なこと(=3.11)は既に起きてしまっているという話です。すずめの母親に象徴される喪ってしまったもの、直接的な震災の爪痕を描いたシーン以外でも、ミミズがかつて人の集まった廃墟から溢れ出してくることもあり、滅びゆく世界の中で生きていく物語という印象は強く残ります。

「天気の子」での選択の後、世界なんて最初から狂っていたというセリフが好きなのですが、まさしく「すずめの戸締り」は狂った世界に生きる私たちの物語なのだと思います。過去に決定的な喪失を抱えて、これからも少しずつ失いながら、それでも続いていくこの先の時をどう生きるのか。主役二人の見出す答えは、夢や希望や関係性ですらなくて、ひと時だけでも長く生きたいという想いと、あなたはちゃんと大きくなるという未来の自分からの言葉。ただそれだけのものでも、常世で幼いすずめが出会ったあのシーンの回答として、失くしてしまった母親ではなくすずめ自身の言葉が彼女を生かしたということが、凄く良かったと思います。特別でも何でもないその小さな肯定をよすがにして生きていくことが、今の時代の私たちの作品であろうと、そんな風に思うのです。

ちなみに、「天気の子」はゼロ年代が急に蘇ってきたみたいな衝撃があって、「すずめの戸締り」はそこまで直接的なことは感じなかったのですが、改めて振り返ってみると、壊れた世界の中で自分の手で握れるものだけを握りしめて今を生きていく感じ、私が当時感じていたゼロ年代と呼ばれるものそのものな気もします。だからこれは時代が追い付いたというべきか、ここまで後退してしまったというべきか、そんなようなもののように感じられたりもしました。

 

キャラクター的には椅子になった草太の面白さとか、ダイジンの可愛いけどそれだけじゃないところとか、すずめが序盤の道すがらであっていく人たちの暮らしを感じさせる描写も大変良かったですが、何より芹澤朋也が凄かった。草太の大学の友人で、見た目はホストで丸眼鏡で口は悪く無神経だが実は友達想いで教師を目指していて中古おんぼろのアルファロメオのオープンカー(足立ナンバー)で懐メロかけながら面倒な叔母姪にも付き合って東北目指してくれる面倒見の良さもあるC.V.神木隆之介ですよ。いや盛り過ぎにもほどがあるし、こんなの好きにならざるを得ないでしょ。かといって浮きまくってる訳でもなく、映画後半のアクセントとしてちゃんと馴染んでいるのも凄い。割とこう監督の癖は昇華されている映画だと思うのですが、キャストは神木くん指名で口説き落としたエピソードも含め、ここだけ原液かというものが出てきて凄かったです。それと椅子になった草太にすずめが腰掛けるシーン。

 

あと、作中で流れた懐メロ、一枚にまとめてCDにしてほしい気持ちが強くあります。サントラもいいけれど、絶対聞きたくなるでしょ!

【小説感想】プロトコル・オブ・ヒューマニティ / 長谷敏司

バイク事故で右足を喪ったダンサーとそれ自体が行動を予測して補助するAI義足の共生を通じて、身体性と人間性の根源に切り込む物語。なのですが、それだけでは終わらない凄みのある一冊でした。

人間性というものを描くときに、AIに心はあるのかという部分にフォーカスしていたのが「BEATLESS」だったと思うのですが、今作はそこに意思があるのか、そこに精神性があるのかというアプローチではなく、徹底して身体を通じた対話を取り扱っている作品だと感じます。個の掘り下げではなく常に他者を前提としたダイアログを観察して、その対話のプロトコル人間性を探る試み。身体の動きが発するメッセージという原初に立ち返ったうえで、そこにAIやロボットを他者として並べることで、人間とは何かを見つめるような、そんなお話でした。

ままならないAI義足との共生、AIによる振付とロボットとの共演で舞台を見せるダンスカンパニーへの参加。その方向性での掘り下げは最終的に動きによる対話を「距離」と「速度」まで還元して捉え、その地平でロボットとのプロトコルを設けることを模索するところに至ります。概念的で抽象的で、人間性を理論として解体することで極点に迫るようなアプローチ。けれどこの物語ではもう反対側の極に振ったような出来事が、その歩みを妨害するかのように差し挟まれます。

有名なコンテンポラリーダンサーだった父親の認知症と介護生活の始まり。日常生活もままならない、狭い実家の中で繰り返される不条理。親子という一番狭くて近い関係で、崩れていくプロトコルを目の前にして、ただ広がるのはどこまでも生々しい現実。そこには理屈で片付くことは無くて、肉体や匂いをキーにした、煮詰まっていくかのような関係性が描かれます。

読んでいると主人公と同じようにあまりに突然にすべてを介護に持っていかれたように感じて、その圧倒的なリアルにどう読めばいいのかと面食らってしまうのですが、ただこれもまた対話というものを捕らえたもう一つの極点なのだなと、読み進めるうちに思うようになりました。AIと相対する純粋な理論としてのプロトコルと、認知症の父親と相対して壊れていくプロトコル。どちらかだけではなく、その両極を混然一体としながら、そこに何があるのか、人間性とは何かを見つめ続けるからこそ、踏み込めている領域があるのではないかと感じます。

そしてその両方のアプローチのクライマックスが、ダンスカンパニーの公演と実家での父親とのダンスになるのですが、これがどちらも良かったです。特に、ダンスカンパニーのロボットと義足ダンサーの競演の舞台は、文章で読んでいるのに目の前に全く新しい表現が立ち上がってくるかのような臨場感と緊張感があって凄かった。カンパニーのメンバーたちの組み立ててきた理論や、重ねてきたトライアンドエラーの舞台上での結実も、AI義足と共生してきた主人公だからこそ踊れたロボットとのダンスも、鳥肌もののステージでした。

何かを悟ったり、明確な答えがある訳ではなくて、ただじっと身体による対話のプロトコルを見つめ続けるような一冊。読み終えてから誰かと対峙した時、そこにどういう手続きがあって、どんな情報が交わされているのかがふと気になってくるような物語でした。

【ゲーム感想】ゼノブレイド2

ゼノブレイドDE(1)をやって万人に勧められる面白いRPGだ! って思ったのが前回の出来事なのですが、ゼノブレイド2はですね、好き嫌いははっきり分かれるけど好きな人には死ぬほど刺さるやつですねこれ。ゼノシリーズってそういうものだよねという安心感すらある。いやでも面白いです。色々言いたいことはあるけれど、印象に残ったシーンは間違いなく多いですし、DLCの黄金の国イーラをやることで2度美味しい構造になってるのが凄い。

 

DEが全体的に上品な仕上がりだったのと比較すると、とにかくもう熱量で押し切って突破するタイプのRPGだと思います。カレーにカツと唐揚げとハンバーグを載せて、付け合わせに豚骨ラーメンが付いてきたくらいのハイカロリーなメインストーリー。話筋はがっつり王道の少年冒険譚でボーイミーツガールなのですが、とにかくもう全部盛りで男の子の夢と希望とロマンを詰め込みましたと言う趣があります。

ただ、敢えてそうしているのかなと思うのは、今の時代にこの言ってしまえば古臭さのある王道を叩きつけるにあたっては、押し通すだけの馬力が必要だったのかなと。結果としていろいろ突っ込みたいところも多々あるし、ご都合主義的では思うこともあったのですが、そんなことは全部すっ飛ばしてレックスとホムラたちの物語に引っ張り込まれて、最終話はもうボロ泣きするくらいに引き込まれる力がありました。

少年冒険譚だと言いましたが、この作品はレックスが子供であることが凄く重要なんだろうなと思います。彼は未熟で世界を知らなくて、でも目の前のことに真っすぐで人を思いやれて何より未来を信じられる、そういう純粋さを持っているキャラクター。そして彼の前に立ち塞がるのは、立ち位置は違えど、世界や人間、そして自分自身に絶望してしまった大人たちでした。過去に消えない傷を負い、諦めてしまった人たち。その閉塞を突き崩せるのは、レックスが何も知らない子供で、真っすぐに明日を見据えられるからこそ。そんな彼だから、繋げた絆があって、たどり着いた楽園がある。

というか、諦めなくていい、絶望しなくていい、そうやって掴み取れる未来があるんだというのが、ゼノブレイド2という作品の大きなテーマなのだと思いました。だからこそ、敢えてこの時代に旧い物語を蘇らせる必要があって、そのためにはここまですべてを詰め込む必要があったんだろうと、そんなふうに思います。まあ、多分に趣味性を感じるところはありますが。

 

ゲームとしてはDEと基本は同じく、ストーリーを追いかける他に、広いマップを探索し、数多いクエストをクリアするところに特色があります。更に特徴的なのはブレイドのシステム。これはストーリーの根幹にも関わってくるところで、コアクリスタルから同調し、その人と共に生きることになる彼らの存在がゼノブレイド2の鍵になります。

システム的にはブレイドをガチャの要領で引いてそれを育ててというやり込み要素があり、さらに様々なスキルで冒険の幅を広げたり、バトルの奥深さにもなっているのですが、これがまた大分深そうで、その分取っつき辛さのあるもの。私はもう途中からほぼ育成をせずに突っ切ってしまったのですが、ハマればハマるほど沼だなと思いました。あとゼノサーガ好きとしてはなんとかKOS-MOSが引きたかったのですが、排出率低すぎて無理でした。悲しみ。

ブレイド育成以外のシステムも、沼は深いが取っつき辛いのが共通しているように感じて、クエストもDEに比べると手間がかかるけどストーリーに厚みがあるものが多かったり、マップも高低差の概念やフィールドスキルが無いと出来ないことが多々あってやり込み特化ゲームという印象があります。もちろん全く触れなくてもクリアはできる(ほぼそうした)のですが、もう少し片手間に触って楽しめるような作りだとよかったのにとも思います。クエスト進めようとしたら、レベルの足りないフィールドスキル求められて進まなくなるとか、何度か繰り返してクエストはひとまずもういい! ってなってしまったので……。

それとマップなんですが、高低差の概念が入って、ルートガイドがなくなったことでまあよく迷うこと迷うこと。目的地の方向と高低が分かるコンパスは出るものの、上下移動ができる地点が全然別の方角にあることも多々ありあまり役に立たず、マップも高低差がなかなか読み解けないので非常に難儀しました(これもクエストを投げた理由でもあり)。あと、マップが走破したところを塗りつぶしていくタイプではなく、最初から全部出ているので、逆にどこに行ってないのか分からなくなるのも辛いところ。

そしてこれがダンジョンと組み合わさると、もうどこに行けばいいのか分からないしモンスターに襲われまくって走って逃げてるうちに更に迷ってユニークモンスターに襲われ殺されるみたいな事故が多発。そうだよエルピス霊祠とモルスの断崖、お前らのことだ。あとあと、レベルの低い敵と戦ってるうちに、高レベルモンスターが俺も混ぜろよとばかりに入ってきて全滅するのも、言いようのない理不尽を感じたり。

そんなこんなプレイヤーに優しくないところも多く感じたのですが、じゃあクリアできないのかというとそんなこともなく、色々考えてトライアンドエラーすれば育成なんてほぼやらずにストーリー最優先で進めてもきちんと突破はできるのでゲームとしては大変に正しいものだとも思います。DEがあまりにノンストレスの作りだったので、甘やかされたツケをここで払っているという気も。

その辺は戦闘も同じで、ドライバーコンボとブレイドコンボを同時に意識するのも目押しでキャンセル入れるのも敵の動きを把握するのも全部同時になんてできないわってなるのですが、理屈が分かってくるとちゃんと高ダメージを与えてクリアできるという楽しみがあるものでした。ボス戦もまあ何度も死にましたが、その度にああしたらこうしたらと試していくと、ふと倒せてしまうポイントがあったりして、ゲームとしては悔しいけどよくできてるなと思います。何度もお前ふっざけんなよ!! って思ってはいるのですが。

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

本編プレイ時にはレックスの視点でずっと追いかけていて、これは先に書いた通り、ド王道の少年冒険譚。何度も何度も危機が訪れ、その度に覚醒演出(BGMのcouter attackがまた良い)での反撃、特にプネウマの覚醒シーンでテンション爆上がりしたり、最後の別れのシーンでぐずぐずに泣いたりと、彼のまっすぐさとに引っ張られるように楽しめたものの、色々と都合の良いところも感じました。

ただ、別れのシーンからエンディングに突入し、曲の歌詞がホムラからレックスへの想いになっていることで追い打ちを食らい、Cメロで別れを歌っていた歌詞がもう一度だけ時間をという気持ちに変わっていくのに合わせて様子が変わり、ラスサビ歌詞に合わせて再同調でホムラとヒカリが現れてのタイトル表示「第10話 そして少年は少女と出逢った」は完璧すぎてなんかもう全部良かった、最高だったという気持ちに。

大人になれよと言われて別れたけれど、無理やりにでもハッピーエンドに引き戻すのが、やっぱりそういう子供の真っすぐさを謳うゲームなんだなとも思ったり。

 

後はキャラクターはやっぱりみんな好きなのですが、中でも好きなのはニア。彼女もまたマンイーターであるが故に追われて諦めていたものをレックスに出会って救われて、だからこそ本当の自分を出せたブレイドニアのイベントが非常に印象的でした。思わずその後のパーティ編成をニアをブレイドで使うために大幅に見直したくらいに。あとシンが最後にニアにかけた言葉さあ!

どうあがいても負けヒロインだよなあとは思うのですが、どうか幸せにと思います。

あと亀ちゃんことジークも、序盤の胡散臭い関西弁を喋るギャグキャラ路線から後半に来ての頼れる兄貴分っぷりが最高でした。敵ではあるが、自分を救った人でもあるマルベーニに向けての最後のつぶやき、苦みがあって良かった。

 

 

とここまでが本編をやっての感想。で、「黄金の国イーラ」ですよ。

システム的な改善が入ってかなり遊びやすくなっているところも良かったのですが、物語の位置づけとそれによって本編の見えなかったところが見えてくる構造が凄かった。

 

本編の中で断片的に回想されていた500年前の聖杯大戦、つまり古王国イーラが雲海に沈んだ事件があり、シンとヒカリの運命を変えた出来事でもあるそれ。シンのドライバーであるラウラ、英雄と後世に伝えられるヒカリのドライバーだったアデルを中心に描かれるのは、約束されたバッドエンドへ向かうストーリー。

いやもうほんと辛い。パーティメンバーがみんな魅力的で、イーラという国も魅力的で、でも沈むんですよこの国。プレイヤーは滅ぶの知ってるの。特に終盤、クエストをこなしてヒトノワと呼ばれるもののレベルを上げる必要があるのですが、このクエストの内容がメツに襲われたイーラの復興関連で、街の人たちの悩みを聞いたり助けたりするうちにどんどん愛着がわいていくんですよ、滅ぶと知ってるこの国に! もう敵国に潜入してその住人の温かさに触れたスパイの気分ですよ。

エストをこなすとヒトノワ=人の輪が広がっていき、人々が連帯して更にいろいろな難題を解決して、いつの間にか街は一丸となって住人たちの口からは未来を見た希望が出てくるようになる。そしてその中心にラウラとアデルがいて、一身に期待を背負って、メツを倒して帰ってきてねと言われ、戦いが終わったら何をするんだと言うのですよ。

でも滅ぶんですね、話を進めると。あまりにあっけなく。あんなに希望に溢れていた人々と街が、天の聖杯の力で一瞬にして崩壊する。その力の絶大さと、あれだけ希望を持たせた中で何も救えなかったという悲しみが、ヒトノワを繋げたからこそ全部跳ね返ってくる。彼らのことなどよく知らなければ、まあそういう歴史だもんねで済むことが、強制でクエストをこなさせることで無理やり自分事にさせられる。いやもう完璧なゲームデザインにして、どんな鬼畜の仕様かと。

 

そしてイーラで感じた忸怩たる思いを胸に本編を振り返ると、レックスと一緒に前だけを見て駆け抜けたその裏に、いったいどれだけのものがあったのかを思い知る訳です。

例えばファンの登場シーン、カスミのことを知っていると忸怩たる思いになるし、彼女を見たシンのやったことも分かるけど、それはまたファン・レ・ノルンという存在の否定でもある訳で、ドライバーが死ぬとコアクリスタルに戻り、再同調時には過去の記憶を失うというブレイドの仕組みが生み出す闇を感じたりとか。

 

そして何より、レックスからだけではなく、ホムラ/ヒカリからの想いが見えてくることで分かるものが大きい。ホムラ/ヒカリの存在、レックスにあんまり都合が良くない? まあヒロインだからかなと思ってたんです。でも500年前を踏まえて、二人とレックスの出会いから、交わした会話を振り返ると、都合が良すぎるくらいの存在だったのはどっちだよって。その力でイーラを沈めたことで自分の人格さえ封じたヒカリが、レックスの言葉でどれだけ救われたのか。自分たちの消滅を望んでた二人が、どうしてもう一度未来に手を伸ばそうと思えたのか。レックスは確かに前しか、自分しか見えていなかったけれど、その過程で彼女たちの欲しかった言葉をどれだけ伝えていたのか、イベントシアター見返してびっくりしました。それはEDの歌詞がああなる訳だと。

それはまたシンも同じで、イーラが沈み、ラウラを法王庁に奪われ人を憎んだ彼に、かつてイーラの仲間たちと追いかけた希望をもう一度その姿と言葉で見せてくれたのはレックスだったのだと思います。だからこそ、ずっと頑なだった彼のラストシーンがああなったのかと。

あとサタヒコ、どうしていきなりレックスたちを守ってマルベーニ相手に特攻したのかと思ったけど、それは! そうなるよな!! 彼もまた、マルベーニのことは絶対許せないだろうし、レックスたちの姿に思うところがあって当然だったのだなと。

 

500年前に潰えた希望。それを鮮烈に体験させてくれる黄金の国イーラという追加コンテンツを踏まえて、改めて感じる今一度の希望を灯したレックスという存在。レックス自身は過去を背負わずに現在と未来を見据えていて、だからこそ過去からの因果を断ち切り、未来へと希望を繋ぐことができたのですが、絶望の源に何があったのかを知ることで、改めて大きな枠での物語が見えてきます。まず最初はレックスと共に駆け抜けて、そして過去を知って俯瞰することで絶望と諦めを断ち切る物語としての裏打ちを得るという、一度で2度美味しい構造になっているのが凄いなと思いました。

そして、本編の強引なまでにハッピーエンドに持っていくやり方、無理やりじゃないかと思うところもあったのですが、この物語には500年前の挫折を経て、どうしてもハッピーエンドにならなければならない物語としての必然性があったのだなと、改めて感じました。レックスは背負っていないからこそ成し遂げたのだけれど、物語としては500年前を背負っているというか、そうでなければならなかった、そうなることを謳い上げる物語でなければいけなかった。だからこそこの熱量で、この勢いで押し切るだけのパワーが生まれたんだろうなとも思います。