【マンガ感想】まちカドまぞく 1~5 / 伊藤いづも

 

まちカドまぞく 5巻 (まんがタイムKRコミックス)

まちカドまぞく 5巻 (まんがタイムKRコミックス)

 

アニメがとてもとても良かったので原作をまとめ買いして読んだのですが、アニメでやった2巻(+3巻の最初)までは序章みたいなものじゃん! ってなりました。4コマですがストーリーの動きが大きいマンガで、どんどん真実は明らかになるし、新しい展開が来るので、これはぜひ続きもアニメで見たいなと思います。いやほんとめっちゃ面白いですよこのマンガ。

一見するとまぞくと魔法少女が共存する不思議な街での日常を描いたきらら作品らしい4コマなのですが、毎巻のラストにかけて「今明かされる!」のタイトルと共に謎明かしがあったり大きな展開があるのが特徴。そして、意外な展開もありながらそれぞれのキャラクターが彼女たちらしい動きをして、同時にそれまでに散りばめられた要素を拾い集めて形にしていくのがとても上手いです。

これはこういう設定/キャラクターだからと提示されると、こういう不思議な要素を持った日常コメディだと、多少突っ込みどころがあってもそういうものだと思って流しがち。でも、そこを広げて繋げて、驚きの事実が明らかになって、それがまたキャラクターたちの関係性の変化や成長につながっていく手際が見事。せいいき桜ヶ丘の先代魔法少女にして、桃の義姉である千代田桜とシャミ子の幼少期が繋がっていく3巻ラストがとても良かったです。

それから、ヤバいのではみたいな能力や存在もそこそこ出てきて、それもそういうものとして流した後で、そこを使ってくるのもとてもお上手。普通の倫理観では生きていないことが登場時から見えていたリコくんを中心に、シャミ子の夢魔としての人の心を操る能力の危険性も絡めながら、大きな事件と街のボスとしてのシャミ子の成長を描き、更に桃との関係性で美しくまとまった5巻の話が大変良かったです。それまでの話もですが、ここは優しさしか無い世界では決してなく、かといって深刻な方向に振れる訳でもなく、せいいき桜ヶ丘という特別な街を優しく成り立たせてきたものと、これからそうしていくものを、すごく絶妙のさじ加減で描いているのがとても好きです。

そして、そのさじ加減を成り立たせているのがシャミ子という駆け出しまぞくの女の子なのだなと思います。もうとにかく優しくてまっすぐで頑張り屋で良い子なんですよね。まぞくだけど。うるうるしてるとお菓子あげたくなる。

実は結構危ない能力も持っていたりするのですが、それを悪用しようだなんて思いつくこともなく、当初は打倒魔法少女に、そしていつからか桃と街を守ったり、人を助けたりすることに邁進する姿は応援したくなるし、だからこそシャミ子の周りに光の者も闇の者も集まってくる。ダメダメまぞくだった彼女が、自分の過去を知って、そうして頑張ったからこそ、4巻のウガルルの話や5巻のリコくんの話は、みんなが協力してくれて、シャミ子だからできる、シャミ子にしかできない形で解決できたのだと思います。それは間違いなく街のボスのあり方だし、そのやり方がこの街を作った先代の桜のやり方に似ているというのが、とっても良いなと思いました。

そんな感じでとても魅力的で面白い作品でした。光の一族のことや、何かを知ってそうな小倉さんのこと、その他諸々まだ何かありそうな要素もありますし、この先の展開も楽しみに待っていたいなと思います。