【マンガ感想】彼方のアストラ 1-5 / 篠原健太
どんなことが起きても このメンバーは明るくて 強くて 無敵なんです
アニメがとても良かったので原作もと読んだのですが、改めて本当に面白いし、素敵な物語でした。
惑星マクパでのキャンプに向かったケアード高校B5班は、マクパ後で突如現れた謎の球体に吸い込まれ、気がつくと宇宙空間を漂っていた。偶然にも宇宙船を発見した彼らの、故郷に帰るための旅が始まるというお話。
学生だけで放り出された5千光年の彼方、その絶望的な状況にも屈せず、一歩ずつ前に進み続けるところ。それこそがこの作品を貫いているテーマなのかなと思います。恐れず、諦めず、自分で考え、自分で選んで、手を伸ばし、走り出す。そして、前を向いて、進み続ける。これは、そうやって彼らが彼らになる成長の物語であって、主人公であるカナタがアリエスの荷物を奪ったひったくりを追いかけて走り出した最初のシーンから、本当に大変なこともたくさんあった物語の最後まで、決してそこがブレることがないのが魅力だと思いました。
そしてもう一つ、最後までブレなかったのが仲間を信じること。てんでバラバラのメンバーがぶつかり合っていた序盤から、メンバー間でも様々なことがあって、けれど、この9人で、この9人だから生き延びてきた。それは誰が欠けてもできることではなかったし、窮地を乗り越えるごとに固くなる結束、そして仲間のために頑張れる、時には命だって張れる関係はとても眩しいものがあります。あと、学生たちの修学旅行かよという恋模様的なものも、大変に眩しくて良いものでした。恋模様未満だと思ってたらいきなりゴールテープの向こう側へワープした奴らもいましたが!
そして、この2つがあるから、どんなに辛い境遇でも、生死の境をさまようような事があっても、これはワクワクする冒険になる。正直、様々な惑星を巡る中での命の危機は一度や二度ではなく、次第に明らかになる謎や、彼らの中の「刺客」についてはショッキングな出来事も多いです。そうなればカナタだって折れそうになるし、それは他のメンバーも。
それでも、この作品は、忘れずにギャグを織り交ぜながら、どんな逆境からでも前向きに進み続けます。逆に言えば、その2つが絶対にブレないから、こういった謎でストーリーを引っ張りながらも、どこまでも真っすぐであり続け、それがこの作品の魅力を生み出しているのだと感じます。中でも最後の「刺客」の話は本当にね、その真骨頂を見たというか、本当に君たちは大した奴らだと、そう思いました。
作中では様々な惑星で様々な生態系が出てきたり、謎科学技術がちょくちょくでてくるのですが、この辺りの空気感はちょっと懐かしい感じがあります。SF冒険ものというジャンルも合わせて、特に序盤の空気は、昔だったらNHKで夕方にアニメをやっていたんじゃないか、みたいな感じ。
そういう部分も含めて、懐かしく、正しく、真っすぐで、ワクワクドキドキする、ああ子供の頃に読みたかったなと思うような、そんな眩さを持つ作品だと思いました。とても面白かったです。