【マンガ感想】メイドインアビス 9 / つくしあきひと

 

 いやー、ファプタ…………ファプタ辛いな……。

前の巻では深界六層成れ果て村、人ならざるものの領域だと思わせていたものが、極限環境で人の業が煮詰められた果てのものだったことに言葉を失ったのですが、いやしかしそこにレグたちがやってきたことで至る帰結がこれとは。容赦がなくて、けれど善悪で切って捨てられるような安易な逃げ道もない。アビスに潜るとはどういうことかを見せつけられ続け、それでも進み続ける物語なのだと思いますが、それにしたって。

リコは探窟家であり、そっち側の人間だというのはボンドルドの時にも言われていたので、まあそうだよなとか。イルミューイの受けた仕打ち、決死隊の末路に村の成り立ちを考えればファプタはそう在ることしかできないよなとか。その上で記憶を失ったレグが、レグらしく答えるならばそう行動するよなだとか。それが全部噛み合った結果がこれでしょう、いやあ。

あとこの物語、思いを引き継ぎ背負った上で先へ先へと潜っていく、継承の物語でもあるのだなと思いました。ナナチが過去を振り切って、受け取ったもの。プルシュカの想い。全部を連れて皆で底を目指していくのだなと。

しかしこう、かつて結婚を約束して旅へ送り出した男が、記憶喪失になって別の女を連れて帰ってきたみたいになってるんだけどファプタさん、レグの大切なものだからと隠れて世話焼いてるの良い子なんだよな……。でも村の人たちも、食堂のおかみさんとか基本良い人たちなんだよな……。