【マンガ感想】とある科学の超電磁砲外伝 アストラル・バディ 1-3 / 鎌池和馬・乃木康仁

 

 超電磁砲アニメの大覇星祭編を見てやっぱり食蜂操祈好きだなと思い、新約とある11巻(食蜂さん回)をつまみ食いして、それからこのスピンオフに手を出したのですが、いや大変良かったです。面白かったし、それ以上にすごく好みのお話でした。

食蜂派閥のNo.2である縦ロールの帆風潤子を主人公とし、食蜂や彼女の出身でもある「才人工房」絡みの過去が大きく関わってくる物語。いろいろな要素がギュッと詰めこまれているのですが、レベル5を育てるとされた施設での過去を起点に全てがしっかり繋がっていて、帆風を中心にキャラクターたちの強い感情が交錯するのが大変によろしいと思います。そしてまた帆風さんが良いキャラしているんです。食蜂と美琴を仲良くさせようとして上手くいかずにしょぼんとしているのがなんだか可愛い人だなと思っていたのですが、まさかそこにああいう気持ちがあったとは。

この物語、レベル5を育てると言われた施設でレベル5になれなかった子たちの話であって、それはつまり才能と執着の話になる訳で、そんなのもう最高に決まっているのです。そこへさらに、感情と関係性の描き方、過去を現在を含めた物語への絡め方が非常に上手くいので言うことなく。

レベル5に届いた食蜂に対して、届かなかった帆風の自制と自縛。子どもたちの中でも優れていて、心から憧れた帆風がNo.2に甘んじることを許せない入鹿の想い。才人工房とレベル5に呪われた子どもたちの物語が、お互いに向けた強い感情と関係性を鍵にして展開していくのはたまらないものがありました。

そして女王をさらわれた食蜂派閥の鉄の結束からくる抗戦も大変素晴らしかったです。女子中学生のグループとは思えないというか、ヤクザの抗争かよっていう。あとはやっぱり食蜂操祈の偽悪的なところが好き。自分には守る力がないから派閥を抜けると言った帆風に向けた言葉、しびれました。レベルという基準に縛られて、自分がどれだけ力になれるかに呪われた子に、立場的にはそんなこと言えた義理ではないはずの食蜂が、あんなストレートな言葉をぶつけるのはね、この二人の関係性尊いね……。

あとは才人工房が本当にクソ中のクソだなあと。実はプログラムは打ち切られている中で、前向きに訓練をする子どもたちがみんな本当に良い子たちで、施設のあり方に悩みながら子どもたちに入れ込んで自分のできることに向き合った遠峰先生が……それが故に事故に繋がったというのがもう救われなさすぎる。入鹿の感情も、小説で読んだ蜜蟻のその後も、猟虎が選んでしまった道も、帆風が自分に課した枷も、食蜂の生き方においてまで、あまりにも大きな呪いを残し過ぎではないかと思うのですよねこの施設。やるせない。悠里千夜の存在がその闇を少しでも晴らすことができることを願って、4巻を楽しみにしています。