【マンガ感想】ダンジョンの中のひと 1 / 双見酔

 

 並外れた冒険者だった父が地下ダンジョンに消えて3年。未踏の地下9階層で命をかけてモンスターと闘うクレイだったが、戦闘中に事故で壁が崩れるとモンスターは喋りだし出てきた少女はダンジョン管理者を名乗り……なんやかんやでクレイは運営側として働くことにというお話。

冒険者達が命をかけて潜るダンジョンに運営管理者がいて、いつの間にやらそちら側の人間になっちゃった冒険者のお話ですが、謎の力を持つ管理者や普通に仕事としてダンジョンで働いているモンスターたちとの話が面白いです。そう、ダンジョン運営の裏側を見ていくのも、スケルトンに入って冒険者のパーティーと闘うのも、まだ見ぬ階層のモンスターと手合わせするのも、普通にとても面白いのです。ですがこのマンガ、読んでいるとなんだか不思議な気持ちになってきます。

派手に種明かしというかネタばらしをされて、今まで命をかけてきたダンジョンがこんなにビジネスライクに運営されているという、価値観がひっくり返るような出来事があったはずなのに、クレイのスタンスがあまりにも変わらないのですよね。父親の消えた謎も依然として自分が深い階層にたどり着くことで知ろうとしてるけど、運営側で10階層のモンスターとも知り合いになっちゃった今、自力でダンジョンを踏破するって心持ち変わってこない? だとか、モンスター側は複製体で死んでも本体は無事という命のアンバランスを知っても冒険者がダンジョンで死ぬことは当たり前と思ったままなの? とか。

そういうクレイの不思議なあり方も、彼女の父親が消えた謎も、そもそも何の目的でダンジョン運営なんてしているのかも、いま時点では表層だけを見せているこの物語の先で、だんだんと繋がってくるのかなと楽しみに思います。いや、クレイは本当にただそういう人なだけという気もしなくはないのですが。