【小説感想】りゅうおうのおしごと! 14 / 白鳥士郎

 

りゅうおうのおしごと!14 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと!14 (GA文庫)

 

 最終章開幕。表紙が物語る通り、八一は完全に追いかけられる立場となり、ついにあいの物語が始まったという感じの1冊。

いやしかし、将棋の世界、勝負の世界、恐ろしいところですねと。小学生のするような決断じゃないし、覚悟じゃないですよこれ。これまでも、特に勝負の場では大人びている描写は多かったですが、今回は一足飛びに超えてきたし、思ったよりずっと早く、ずっとはっきりと師匠の元を巣立っていったと感じます。

そして姉弟子は、上げて落とすというか、本当に作者は銀子を地獄に投げこむのが大好きだなというか。将棋でしか人間関係を繋げなかった少女が、想い人の背中に手を伸ばしてプロ棋士になりようやく掴みかけた関係に、それは将棋とは両立しないよと返す刀で斬り捨てるの、たちが悪いなと思いました。銀子の根本問題は何も解決されないまま、バフにバフを重ねて力押しに押し切ったけど、身体的な限界できっちり帳尻が合うの、あんなに感動的で熱いここ数巻だったからこそ、それは……。

それから、絶対に勝ち筋がないってわかっているのにここから天衣のターンやるんですか! いや勝負に絶対は無いから、ここは攻めの一手ですよね勝負師ですもんね分かります。分かりますが、いや9巻最高だったじゃんもう許してよ……という気持ちが無くもない。

全体的に、これからの闘いへの期待と高揚感はありつつ、この時点でめちゃくちゃにしんどいんだけどこの先どうなってしまうのかと思う最終章の開幕でした。予想は超えてくるだろうという信頼はあるし、間違いなく楽しみなんですけどね!