【マンガ感想】進撃の巨人 34 / 諌山創

 

 完結。マーレ編以降はよく分からないけどえらいこっちゃみたいな感じで読んでいたのですが、なるほどこうして終わるのかと。全ての出来事が繋がってきたことへの納得感と、嵐の過ぎた後のような寂寥感と、それでも続いていくこれからを感じる最終巻でした。まるで、大きな歴史を見てきたようだなと思います。

この作品、誰が正しくて間違っているかは相対的で、誰しも成功もすれば失敗もして、完璧な人間はおらず、行動の結果で全てが良くなるなんてこともないというのが、貫かれていたように思います。エレンという主人公に地鳴らしで世界を踏み潰す行動に理由があったと分かっても、だからエレンは正しかったとはならず、もし結末が見えてなくても俺は世界を平らにしたと言うし、ミカサのことを聞かれれば情けない姿も見せる。他の人たちも、誰もが格好よかったり愚かだったり、殺しあったり想いあったりする。もちろん、特にエレンとミカサとアルミンはこの物語で特別な立ち位置を占める訳ですが、それでも誰かのことだけを特別扱いはしない、人間のことを高く見積もってはいないし、絶望してもいないバランス感覚を感じました。この物語は、そうやって人間臭い人間たちが生きて、願って、行動して、そうして積み重ねてきたことの結果だから、読み終えて、ああこれは歴史だったと感じるのだと思います。

それから最後まで巨人から自由になることがテーマだったのだなとも。1巻で理不尽な暴力として現れた巨人の居る世界から、巨人を駆逐して壁を越えて自由を求めた物語は、最終巻で始祖ユミルを2000年縛り続けた愛を断ち切って、巨人という呪縛からユミルの民を解放する物語へ。意味合いは全く変わったけれど、始まりと終わりのテーマが同じになるのが良かったです。

終盤は連載で追いかけていたのですが、単行本の追加ページが非常に良かったです。始祖ユミルとミカサのシーンはこれがどういう話だったのかがはっきりするし、ラストはもうミカサ……ってなる。それから進撃のスクールカースト。争いは決して無くならないが、見てきたこと語り継がなければならないという、最後のアルミンの言葉に、与太話だった現代編が呼応するというのは、ちょっと思ってもみないところからきたなと思いました。まさにこの物語が歴史であったからこそのものであったなと感じます。