【小説感想】エンドブルー / 入間人間

 

エンドブルー (電撃文庫)

エンドブルー (電撃文庫)

 

 入間人間による百合短編集、ですが流石にこれを単独で読めるから何の注意書きもないと言うのはどうなのかもと思う、「クロクロクロック」と「少女妄想中。」の後日譚。

私は「クロクロクロック」の方は最後まで読んでいないので知らずに読む形になって、それはそれでも十分面白く読めましたが、「少女妄想中。」はこれもう知らずに読むのと知って読むのでは破壊力が違いすぎるのではという感じだったので、「クロクロクロック」も既読者からするとそうなのかも。読み始めは蛇足なのではと思わせておいて、ものすごい切れ味で斬られたという感じがありました。

『ガールズ・オン・ザ・ライン』『雅な椀』は陶芸家の弟子と裏稼業に身を置く女の、ちょっとインモラルな空気のある関係から始まる物語。ふわっとしているというか、馬鹿で役立たたずと自己評価しているから他人と関わろうとしなかった子と、命の危険と隣り合わせの世界で半身のようだった兄を失った女の間に生まれる関係性が、変わり種ながらこういう感情の動きを描かせたら流石と思いました。

そして『光る風の中』『今にも消える鳥と空に』。

かつて、自分だけに見える「彼女」を追いかけて、この世界から消えてしまった幼馴染。そのまま時を重ねていくうちに、自分のことを好いてくる、自分の片目を傷つけた姪との関係が生まれて、そして今。二度と重なるはずのなかった二人の世界が、鳥に導かれるようにして、時間も距離も超え、白昼夢の中に重なります。

好きだったあの人は、何も言えないまま、何も言わずに消えてしまったから、再会を通じて本当の別れに至る。そういうエピソードなのですが、これがまた凄いキレで。

あの時の姿のまま変わらない彼女と、歳を重ねて変わった自分。自分の足で走って手を伸ばして何かを掴んだ彼女と、片目を失うことで何かを手にした自分。誰もいない無音の街と真夏の刺すような熱の中で浮かび上がるその対比が、もう決して交わらない二人のつかの間の交錯であることを際立てて、けれどその一瞬に行き場を無くしていた想いは集約される。抜けるような空の下で描かれるそれが、まさしくタイトル、そして表紙のイラスト通りに、鮮烈な青の印象を残す作品でした。