RIGHT×LIGHT 〜空っぽの手品師と半透明な飛行少女〜 / ツカサ

一体何作期待賞があるのかとそろそろ思い始めたガガガ文庫の新人さん。
完全なる表紙買いをしたので中身については良く知らず、あらすじを見たらマジカルコメディとあったので、落ちものラブコメかなと思っていたら全然違いました。表紙に関しては素晴らしいの一言。イラストも良いですが、青空の背景とタイトルを含めたデザインがストライク。
中身は極めてオーソドックスな異能バトルもの。心に過去に負った傷を抱え日常を生きる少年の元に、魔術を使う少女の幽霊が降りてきて少年は依代にされて魔術バトルの世界へと巻き込まれます。そしてそこに学校のクラスメイトが関わってきたり、少年の秘められた力と過去がどうのこうのだったりするという、そんなお話。
キャラクターの造形から、魔術を含めた世界観、ストーリーの展開まで、極めて今っぽい感じでオリジナリティは感じないのですが、全体的にソツなくまとまっていて出来はかなり良いのではないかと。散らばっていた要素がきっちりと繋がって一つの物語になっていますし、バトルの見せ方も上手。傍若無人のようで意外と柔らかさもある幽霊少女アリッサのキャラクターもなかなか魅力的だし、敵役になるキャラクターにはちゃんと腹が立つという安心感。その辺りは新人離れしている感じです。
ただ、全体的に完成度は高いものの、この作品だからと思える何かが不足しているような気が。ベースとなる部分の完成度は高いのだから、キャラでも設定でも物語でも、新人らしい何か突き抜けたものがあったらもっと面白くなっていたのではないかと思います。
あと、個人的に主人公の性格があまり好きではないかも。自分が正しいと思うことのためには、他人の気持ちも自分の体も省みないというのは、本人は良いかもしれませんが周りにはとんだ迷惑だと思うので。ある種究極の自己中だと思うのです。
でも、なんだかんだ言っても楽しく読めた一冊でした。続編が出そうな終わり方をしているので、期待をしつつ待ってみます。
満足度:A−