オール讀物 2008年3月号

オール讀物 2008年 03月号 [雑誌]

オール讀物 2008年 03月号 [雑誌]

直木賞受賞ということで、桜庭一樹の特集が。
選評を読んで、浅田次郎との対談を読んで、あぁ、この人は直木賞作家になったのだと実感。やっぱり、すごいことなんだなぁと。
この間の情熱大陸を見たり、この対談を読んで感じたことは、本当に読んで書くために生きている人なんだなぁということ。読んでもらうための強かさも全部含めて、小説にすべてを捧げているような感じがして、ちょっと怖いものすら感じました。


「絶望が花よ」はエッセイ。直木賞受賞までの軌跡と煽りながら、中身は女子更衣室で秘宝館な内容で面白かったです。とはいえ、小説家桜庭一樹の根っこの部分が見え隠れするような内容で興味深かったです。


そして「冬の牡丹」は新作短編。
とても桜庭一樹らしさに満ちた短編で、非常に良かったです。
派遣社員として働いている独身の女性と、自らが大家をしているアパートで浮世離れした生活を送る老人を中心にした物語。かつて厳格だった父、いつからか強くなった母。優秀な子として期待を受けた自分、結婚して家庭をもった妹。流れた時間と、どこか空虚さを感じさせる現在。
桜庭一樹の描くものは、私にとってあまりにスッと入ってくるのでそれが普通だと思い込んでしまうのですが、よくよく考えると世間から外れた人を描いていることがほとんどなのだと思います。この小説もそういう感じ。世間の人間である牡丹の母や妹の言うことも、老人の息子が言うこともわかるのですが、それよりも牡丹が感じている感覚への共感や、老人の生き方への憧れをずっと強く感じました。そして、この人の小説のこういうところが、やっぱり好きだなぁと思うのでした。