イキガミステイエス 魂は命を尽くさず、神は生を尽くさず。 / 沖永融明

イキガミステイエス  魂は命を尽くさず、神は生を尽くさず。 (富士見ミステリー文庫)

イキガミステイエス 魂は命を尽くさず、神は生を尽くさず。 (富士見ミステリー文庫)

ヤングミステリー大賞第6回奨励賞受賞作。
受賞当時作者が17歳だったというのにも納得な感じの若さに溢れた小説でした。何かを書こうとしている熱量みたいなものを感じるのは素敵。
絵本作家の大吾と難病に侵されたその妹一樹。依存のような愛情のような2人の世界。そして大吾の前に現れる生神。死の宣告とともに与えられた猶予期間に、大吾は一樹のためだけに一冊の絵本を描くことを決める。
それだけのあらすじだと真っ直ぐに感動系のお話のように思えますが、理不尽や悪意、狂気に彩られた世界はそんな綺麗な物語を許しません。入れ替わり登場するサブキャラクターたちと大吾や一樹の交流を中心に描かれていく物語は、茫漠とした気持ち悪さを残す感じ。ただ、色々な要素を詰め込もうとした結果、話としてのまとまりを欠いているかなという印象も。それぞれのエピソードは繋がってはいるのですが、読んでいてどうにもバラバラな感じがしました。
そんな中でも印象的だったのは、一樹という少女の姿。難病を患い治療に苦しみ、ADHDを抱えて子供のころから排斥され、兄である大吾に一線を越えた感情を持つ少女。過剰なほどに濃縮された苦しみの中で人とは違う人生を送る彼女の、どこか全てを達観したようでいながら、人間らしい強い想いを抱えた姿が、読了後とにかく強烈に印象に残りました。超然としている、というのともまた違うのですが。不思議。
正直粗を探そうと思えばいくらでも探せそうなタイプの作品だとは思うのですが、どこか特別なものも感じさせてくれることも確か。作者の今後に、注目してみたいと思います。