龍盤七朝 DRAGON BUSTER 01 / 秋山瑞人

龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

秋山瑞人古橋秀之によるシェアワールド企画「龍盤七朝」の幕開けを飾る一冊。
中華風の世界を舞台にしたファンタジー小説で、王朝の第17皇女である月華と被差別民である言愚の涼孤の出会いが描かれています。
シェアワールドの上に様々な物語が構想としてあるようで、それだけにこの世界の描写はしっかり。この世界で生きる様々な人々の風俗、価値観、経済の状況、政治の状況、伝承されている物語などの設定が洪水のように溢れていて、世界観に厚みを与えるとともにここで人々が暮らしいる実感を与えてくれます。それでいて説明過多で話の流れが途切れるようなことがないのはさすが。
ただ、そういった描写が多い分ストーリーの進みはゆっくりで、1巻を読んだ時点ではまだ序章といった感じ。言愚であることを声高に主張しているような青い目を持ち社会の最下層として虐げられる涼孤は、龍を宿す特別な剣技を受け継いでいるようですし、猪突猛進で世間知らずの怖いもの知らずな月華は驚くべき剣の才を持っているようで、この先は何らかの戦いが待ち受けていそう。
月華が川縁で剣を振るう涼孤を見て始まった二人の関係は、明らかに一目惚れなのに本人はそうと気づかず、とりあえず突撃しては迷惑がられる月華の様子が面白いです。明らかな身分違いだけに、この先二人がどうなるか心配ではありますが。
ただ、個人的に漢字の固有名詞が多い小説は苦手なで、ちょっとその点で楽しみ切れなかった感も。割と独特な感じのする文章も綺麗だとは思うのですがどうも合わないようで、固有名詞の乱舞と合わせていまいち情景が頭に入ってこない感じなのが、話が面白いだけに非常に惜しかったです。