ニート / 絲山秋子

ニート (角川文庫)

ニート (角川文庫)

ダメ男とそれに関る女たちを巡る5つの短編集。
最近の語られ方に染められて、「ニート」といわれるとその瞬間「ダメ、絶対!」な刷り込みをされている私としては、「ニート」とその続編にあたる「2+1」のニート男と小説を書いている女の関係というか、二人の間にある感覚の描き方にハッとさせられるものがありました。
もちろんニートな彼には生活を支えていくお金がなくて、でも動き出す気力もなくて、そんな彼をどうしても放っておけない女。だからと言ってベタに共依存な訳でもなく、一定の距離感でそういうものとして接している感じが、淡々と描写されていく辺りが面白かったです。
対等な関係じゃいられなくなることでお互いに思うところはある訳で、ルームシェアをしていた女性(最後まではっきりと描かれない)が迷惑を受けているのも明らかで、それでもあるがままな関係が少なくとも表面上は流れていくこの不思議な感触は興味深いです。こういうのもあるんだなという感じ。
淡々とした筆致で、諦観の一歩手前のような空気を描くのは、冷静になって考えるとヘタレ男すぎて笑っちゃうような「へたれ」や、婚約者を亡くした女性とその友人の会話を中心とした「ベル・エポック」も同じく。特に「ベル・エポック」には諦めともどこか違う体温の低さみたいなものを感じました。
ただ、5編目の「愛なんていらねー」だけはちょっと受け付けなかったです。話の持つ空気は他の4編と大きく違わないのですが、男の方の嗜好がちょっと外れていて、その描写が生々しすぎて……。