空ろの箱と零のマリア / 御影瑛路

空ろの箱と零のマリア (電撃文庫)

空ろの箱と零のマリア (電撃文庫)

ループ世界に囚われた少年少女の物語。
願いをかなえる"箱"の力によって繰り返し続ける"拒絶する教室"。その中で2万回を超えるループの中で記憶を保持し続ける転校生の少女音無彩矢。彼女に突然お前を壊すと宣言される主人公星野一輝。そして一輝の周りのクラスメイトたち。
誰が"箱"の所有者なのか、何のための"拒絶する教室"なのか、"箱"を渡した謎の人物は誰なのか、"拒絶する教室"を成立させるルールは何なのか。そういったことは全て謎のまま、それどころか前回までの記憶もない状況でこのループに主人公共に放り出されるので、最初の方はとにかく何が何だか分からないのですが、少しづつ増えていく情報からおぼろげに世界の輪郭が見えてくる中盤からの加速感は面白かったです。
とにかく、小出しにされる情報、ミスリードめいた挿入、時間軸の前後と、読者を幻惑するような構成が見事。先が全く読めないまま、翻弄され続ける感覚が楽しいです。詰め込み過ぎなほどなのに、読んでいて違和感のない辺りは上手くできてるなぁと思いました。
ただ、ループがあってそこからの脱出という目的があって、そのルールと攻略にキャラクターが完全に殉じているような印象で、どうにもキャラクターの思考に唐突さを感じたり、無機質さを感じたりしていまいち物語に入り込めなかったのが残念。こういう駒が動いている感のある物語はちょっと苦手だったり。
とはいえ、なかなか面白い作品でした。空っぽの無限ループという、最初から何も生み出さないものを経て、この結末に至れたことが、なんかちょっと良いなと思います。