生徒会の九重 碧陽学園生徒会議事録9 / 葵せきな

読んでいて色々感じていたことがラストの真冬に全部吹き飛ばされた!
10巻が本編の最終巻になるということで、着実に卒業式という物語の終わりへ向かっている感じのする生徒会。いつものように会議をする話もありつつ、鍵が卒業式へと向かう話と、会長の過去話が差し挟まれてシリアス分多めな感じです。
個人的にはこの作品のシリアスなところはあまり好きではなくて、この巻では特に会長と杏子の過去話が苦手。笑いをとるような軽い部分と、真面目な重い部分のバランスがどうも変な感じがするので、読んでいて気持ち悪さを感じてしまいます。なので、できればこの作品は物語に「理由」を求めないで、ただ楽しい日常だけを描いてくれていた方が好きなのですが、ずっとこの作品に感じている碧陽学園生徒会の特殊さというか、周りから浮いている感じはその「理由」の部分で語られていることも確か。特にこの巻では、会長と知弦の出会いのエピソードで見える2人のキャラクターの歪んだ部分が、閉じた空間である生徒会の中では見えないけれど確かに存在するものだとして語られていて、それが、ぬるま湯で幸せな日常を描く時にそういう視点をこのシリーズは切り捨てなかったということを示しているみたいで面白かったです。
とはいえ、掛け合いが魅力のシリーズだと思っているので、個人的にはやっぱり、そんな過去は土の下にでも埋めて忘れて、ただひたすらにくだらない会議をやっていて欲しいとも思うのですが。そういう意味では、今回だと答辞と送辞の話はさすがのキレだったと思います。
と、読んでいて色々考えていたりもしたのですが、なんだか最後のバレンタイン話でそんなことはとりあえずどうでもいい気分に。最後までチョコを渡す機会を逸し続けた真冬が鍵にチョコを渡す、真冬が鍵に対する想いを自分に問いかけて、一歩踏み出すシーン。一緒にいると楽しいからそれで充分という、これではきっと幸せになれないと思っていた2人の関係を、肝心なところでヘタレな鍵ではなく、真冬の方から変えてみせたところがとても良かったです。それにしてもこんな話をラストにやって、10巻は結局どうするのかなと。みんな仲良しハーレムエンドな気もしつつ、私としては真冬が幸せになればそれでいいと思います!