19 -ナインティーン- / 綾崎隼・入間人間・紅玉いづき・柴村仁・橋本紡

5人の作家が描く5つの19歳の物語。こういう企画は今まであまり手にしたことのなかった作家に触れる機会にもなって良いなと思います。今回はメディアワークス文庫の企画作品ですが、他のレーベルでもこういうものがもっと増えると面白いかなと。
作品の中では、意表をつかれたのが入間人間「19歳だった」。19歳最後の日。クリスマス。彼女とのデート。あわよくば20歳を前にして、と意気込んだところで巻き込まれるループ時空。幸せ過剰摂取気味で大人になれない時間から、彼は抜け出すことが出切るのかという話なのですが、最初の一編でこういう変化球が出てくるのはちょっと意外でした。紙面の使い方等にも色々と仕掛けのある面白い作品でしたが、ちょっと気をてらい過ぎな気も。
一番面白かったのは紅玉いづき「2Bの神様」。確かなものがつかめなくて、宙に浮いたような浪人生の時間。下手くそな絵でもマンガを描いて、自分のサイトにアップをして。描くことが、自分の描いた作品が、誰かに読んでもらえることが、寄せられたコメントが。文章でも絵でもなんでも何か自分で作品をつくって、公開してみたことがある人になら、主人公の抱く想いは共感できるものだと思います。くだらなくて、大したことなんてなくて、そんなことは百も承知で、それでも特別な、自分の作品。描くのが好きってそういう事でしょと改めて思わされるような一編でした。
そして一番どうしたらいいのかわからなかったのが柴村仁「xxxさんの場合」。大学サークルの人間関係を視点をずらしながら描いていく作品なのですが、ストーカー男の前のめりなキモさとか、媚び媚び女子の二面性とか、「あーそうそう。そうですよねー」以外の言葉が浮かんでこないというかなんというか。とりあえず、大学生ってこういう感じというものを直球で描いた一編ではありました。