ゴールデンタイム 外伝 二次元くんスペシャル / 竹宮ゆゆこ

ゴールデンタイム本編は脱落したのですが、二次元くんが主役の外伝と聞いて思わず手を伸ばしました。そしてやっぱりこのシリーズらしいめんどくさい人たちがめんどくさく青春フルスロットルな話だったのですが、二次元くんのめんどくささに色々心当たりがありすぎて、竹ゆゆ容赦無いなと思ったりとか。
そんな訳で主役の二次元くんはヤンキーな姉に虐げられてきた反動で二次元を生きることに決め、脳内嫁のVJ(スペル間違ってる)と幸せに……などなれるわけもなく。あっちをふらふらこっちをふらふら、強気になったと思えばすぐ折れそうになる精神状態ジェットコースターで、三次元に期待して、二次元に逃げようとして、結局何もできずにウジウジしたり。
背を向けると宣言した三次元に未練タラタラで、実際彼の周りには結構女の子がいる訳で、でも傷つくのが怖いから自分で一線を引こうとして、そのくせ手が届かないことを呪って、それで二次元に引きこうもろうとしたってその覚悟すらちっとも足りないわけで。自分のことしか見えなくなって、自分基準で周りを見下してしっぺ返しにあって、結局何にもできなくて。自分から一線引いたくせに未練たっぷりな秋への態度も、嫌っているようで実はシスコンな姉への態度も家庭環境も人間関係も抱こうとする夢も何もかも甘っちょろいんだよしっかりしろよと思ったりもするのですが、大学生のぐずぐずした青春物語としてはこれ以上なものはないと思ったりも。というか、心当たりが、ちょっと、色々、うん……痛い。
同人娘の愛可も魔性の女な秋も、二次元くんを合コンに誘うチャラ男の江別も、みんなそれぞれにいろいろ抱えてめんどくさく、それもまた若いね青春だねと思いつつ。様々な価値観があっていろいろな世界があることを知って、少しだけでも前に進めた二次元くんは人間関係には恵まれているんじゃないかなあと思ったりも。そして多分この話は、誰の視点から描いてもやっぱり面白いんじゃないかと思います。完璧な人間なんてどこにもいなくて、誰も彼も未熟で隙だらけで、だから丸腰でぶつかり合い、こじらせたり成長したりしながら生きているっていうのが、竹宮ゆゆこの青春ものの魅力だと改めて思うのです。
どんなへっぴり腰で傷つきまくったとしても、逃げないで闘うと決めたのだから、ようやく三次元に手を伸ばすことができたクライマックス。この二人の関係はこの先も大変に大変に面倒くさい事になりそうな予感が、万里と香子のところ並にひしひしと感じる訳ですが、何はともあれお幸せにと思うのでした。うーん、青春!