のうりん / 白鳥士郎

のうりん (GA文庫)

のうりん (GA文庫)

アニメが面白かったので積読の山から引きぬいてきましたのうりん1巻。
アニメも大概ひどいと思ったけど、原作のネタも相当ひどいな! という一冊でした。下ネタパロネタなんでもござれのハイテンション暴走系農業ラブコメ元アイドルも出るよ、みたいな。
ただ、目次で

時事ネタが風化しますので、購入後はお早めにお読みください。

と言い切った上での、この大量のネタの投入、そしてイラストからフォントいじりまで使い切って、お高く止まった小説らしさなんてごみ箱に捨てて面白いと思うことやれる限りやりきってやるんだという志はいっそ清いと思うのです。実際今読むと既に賞味期限ギリギリ感に溢れたネタもあるあたりまで含めて潔い。
そしてその下品ったらないネタの応酬だけで終わらせない農業部分の真摯さ。さすがに取材バッチリで創り上げただけの作品であって、農業というものに対して都市部で暮らしていると知らないようなことも多く描かれ、そして何より簡単に白黒つけないその向き合い方の真っ直ぐさが素晴らしいと思います。それがバカをやりきった上ですっと差し出されるという、軽くもならず、説教臭くもならないシリアス配分の絶妙なバランスもまた。
ということで、本気も本気のジャンクフードというか、ジャンクであることに対する職人のこだわりみたいなものが見える一冊でした。味付けが濃すぎて読み終えた後に胸焼けするので続けて読みたいとは思いませんが、この味はちょっとしたらまた読みたくなるんだろうなあと思います。林檎が耕作に惹かれているっぽい理由もまだ全然わかりませんしね!