四人制姉妹百合物帳 / 石川博品

石川博品のおしゃべりブログ: 『四人制姉妹百合物帳』第1章公開
数多のラノベレーベルからボツにされたという問題作が同人誌で! ということで石川博品最新作。読み終えて、とりあえずこれを出版する編集者がいたらチャレンジャーだろうなあとは思いました。内容が過激だとか、そういうことではないんですが、なんというか、こう。
そんな感じなのですが、面白く無いかというと全然そんなことはなく面白いのです。男子高校生が女子高校生からの伝聞の形式で聞く、女子校内の「百合種」というサロンの姉妹たちの物語。なので語り手の立ち位置的にどこまでが創作だか分からなかったり、そんな女子校あるんかいみたいな話になるのかと思っていたら、そういう細かいことはどうでもいいかなと思えてくるという。
描かれるのは閖村学園高校に生まれたサロン「百合種(ユリシーズ)」に集った地の繋がらない、けれど姉妹のように愛し合う四人の少女たちの一年間。女子校! 花園! ごきげんよう! な格調高い空気が感じられないこともなく、でもやってることの主軸にあるのが延々と「つるつる」の話で、なんとまあド直球に下の話だよね! みたいな。そしてそんな馬鹿騒ぎを繰り返しながら、最後に確認される姉妹間にある、あるいはあった感情は、その切なくてちょっとズルいところまで繊細に描かれていて。
そして読み終えて何だか不思議なものを読んだなあという気持ちになるのでした。あまりにも法螺話めいているようで、それにしては血が通い過ぎているような。何か狐に化かされたみたいな。オマージュ元がさっぱりわかっていないことも含めて、私が色々と読み落としているような気はするのですが。
そんな話の中では第三章に当たる「閖村三十人剃毛」が面白かったです。怒りに端を発し「つるつる」によって結ばれて、文化祭の裏で跋扈する革命集団「無毛」の勃興と崩壊。いやもう本当にくっだらない話のはずなのですが、なんとも憎めない馬鹿騒ぎであるというか、集団の膨らみ方と先鋭化されすぎた思想からくる終焉の変なリアルさが相まって、気がつけば最高にクールなものを読んだような気分になっている一遍なのでした。