部員が足りずに廃部の危機が迫る部活動、対立組織として出てくる生徒会、行動力があって傍若無人な美少女先輩と振り回されながら面倒を見るヤレヤレ系後輩。そして学園を舞台に起きる事件に先輩が首を突っ込んで……というまあベッタベタもいいところな筋立てから繰り出される物語ですが、その探偵とワトソンは麻耶雄嵩が書いたものだったのです、という。だって麻耶雄嵩の探偵だよ？
という感じで後はネタバレありで。
まりあ先輩が事件に首を突っ込み、生徒会を犯人とする推理をでっち上げ、それを必死に主人公の彰が止めるという形式での連作短編。結局トンチンカン推理は彰以外の誰にも披露されずに終わり、事件は特に解決もせず読んでいて何だこれと思うのですが、なんかこれ怪しいよなと思って読んでしまうのは作者が故。
というのも、まりあの推理は確かに強引で動機が謎だったり偶然が重なっていたりするのですが、証拠もなければ反証もないのです。彰の指摘も論理的破綻ではなく実現性みたいな所で実は終わっている。麻耶雄嵩世界では論理さえ通っていればそれは真実になる以上、なんかもう嫌な予感しかしないですよねこれ。
そんな訳で特に語り手が怪しい怪しいと思いつつ読んで、最後の話でほら来たそら来たみたいな気持ちになり、オチまで来たら思ったほどには酷くはないけど、やっぱりそうなるんじゃないか！ みたいな。確かにこれは新しい探偵とワトソンの形だし、探偵の在り方についての実験の一つだし、オチでは爆笑して麻耶雄嵩作品的な楽しみは得ることができました。ただ、そのオチに至るまでの所謂ハルヒ的な学園モノとしては、キャラが弱いというかなんというか、ぶっちゃけあんまり面白くないのが作者ファン以外に勧めるのはちょっと厳しいかなというのが正直なところ。
しかしまあ、本当に麻耶雄嵩という人は作中の真実を何だと思っているんですかね！
