バビロン 3 ―終― / 野崎まど

 

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

 

当然野崎まどなのだから身構えながら読むのです。全く別の話が始まって、それがどんなに丁寧に積み上げられていって、たとえそれがどんなに面白くても、キャラクターにどんな魅力があっても、それは崩すために用意されたものなのだと。

分かってはいたのですが、積み上げたものが無駄ではなくて、ようやくたどり着いた結論を示した上で、ほらだから最初からそう言ってるじゃないとばかりに、あまりにも簡単に崩れていくのを目の当たりにすると、それはやっぱりショックです。そして同時に、ああこれが野崎まどだなと、今回も思うのでした。

自殺法という日本の新域が制定した地方条例は、しかし世界の幾つかの都市に飛び火して、国際問題となりつつあった。そんな中で、アメリカ大統領アレキサンダー・W・ウッドを主人公にこの巻は語られていきます。考える人と呼ばれる、およそ政治家らしくない特性を持った彼と、それを支える腹心たち。それぞれのお国柄が色濃く反映された各国首脳とのやり取り。FBIが報告する「マガセ」という謎の女の存在。そして舞台はサミットへ。

回り道に回り道を重ねて、自殺法というものを考え、考え、考え抜いた彼の辿り着いた結論。この物語自体とても面白くて、読者としてはアレックスに肩入れをして読んでいて、彼の答えはきっと正しくて、だからこそ彼の考える道が一つの救いをこの上ない形で示したことに安堵して、なのにそれは唐突に突き崩される。

回り道の末の回答おめでとう、だってこの物語は自殺法が主眼じゃなくて、最初から善悪の話をしていたでしょうと突きつけられ、その上で純粋悪として立ち現れる曲世愛という存在。シンプルだからこそどうすればいいのかもわからないそれに、いったいどう対峙すればいいのかわからないまま、ただ早く続刊をくださいと思うしかないような3巻でした。本当にどうするんだこれ……。