【小説感想】宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

 

宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

 

 宮内悠介が博奕をテーマに読みたい作家9人に執筆をお願い、本人の作品と合わせて10篇を収録したアンソロジー本。流石のビッグネーム揃いということで、アベレージの高い短編集になっていました。

博奕と言うとリスクとリターンというか、一か八かの勝負! みたいなイメージが強かったのですが、全て手を尽くしてなお結論が出ない時、天にというか、神にすべてを任せるという側面があるのだなと、そういうシチュエーションを描いた作品が多かったことで感じました。確かにそこには平等があって、でもそこをどう料理するかで作家ごとの色が出るのも面白かったです。

特に面白かったのは山田正紀「開場賭博」。江戸無血開城における勝・西郷会談が、まさに結論が出ない交渉事を天に任せるという意味でチンチロリンによって行われるというぶっ飛び話なのですが、これがめちゃくちゃ面白かったです。立場を背負った建前と個人としての本音の隙間、いかさまの絡んだ勝負師たちの駆け引きが熱い。

それから星野智幸「小相撲」は、小相撲と呼ばれる賭相撲を題材にしたもの。力士たちの勝敗には観客たちの人生の選択が賭けられていて、賭けた方はそこに何を見るのか。真剣勝負とは別のところに立ち上がる、そこにどんなドラマを見せるか、どんなドラマを見せるのかという力士と観客の真剣勝負。題材は相撲なのですが、あ、これプロレスの話なんだと感じました。好き。

あと梓崎優「獅子の町の夜」はシンガポールを舞台にしたある老婦人の人生の賭けを描いたもの。「スプリング・ハズ・カム」を読んだときも思いましたが、本当にこういう洒落た短編を書かせたら素晴らしいなあと。