ハツカネズミの時間 4巻 / 冬目景

ハツカネズミの時間(4) <完> (アフタヌーンKC)

ハツカネズミの時間(4) <完> (アフタヌーンKC)

自由はどこにある?
完結。最後までカタルシスらしいカタルシスがなく、いまいちすっきりしないまま終わってしまった感のあるこの作品ですが、このもやもや感が逆にうすら寒いものがあって怖かったです。
「ハツカネズミ」という言葉が表わすように、世間から隔絶された閉鎖空間の学園で、製薬会社の実験動物にされる学生たちが主人公なのですが、この実験動物扱いがそれほど悪いものに見えず、逆に外の世界がそれほど良いものに見えるわけでもないのが印象的。
主人公の槙の反応にそれが顕著なのですが、檻の外に居ても、檻の中に居ても、結局何かが大きく変わることもなく連綿と生活が続いていくような感じがあります。環境が変わりはするものの、どちらの方が幸せというわけでもなく続いていく日常。その辺りのメリハリのなさが、そのままもやもやした読感に繋がっているような気が。そしてその事に、背筋がゾッとする感覚がしました。
自由を求めた梛、彼を追った桐子、学園でしか生きられないという茗。そして鳴沢の中の人々。それぞれの想いが絡まって起きた様々な出来事はドラマチックではありましたが、どこか閉塞感が漂って。自由に生きた梛が結局病に伏すように、どこまで逃げても人は何か大きな檻の中なのかもしれないと感じさせるような作品でした。