嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 7 死後の影響は生前 / 入間人間

衝撃の幕切れを見せた6巻からまさかの続編となった7巻は、湯女姉さんに『物騙り』役を更新して再スタート。
4人だけの閉じた世界に生きてきた少年少女が始めた殺人が前提の推理ゲームという、相変わらずに一般的な感覚が根本のところで吹き飛んだキャラクターによる事件を当たり前のように軽いタッチで描きながら、でもこの小説の最大の魅力は湯女の語りそのものだと思います。
この作品においてまーちゃんが壊れている人で、みーくんは壊れようとしている人とすれば、湯女は終わっている人。
大江屋敷から妹の茜を連れて出たところで、その先なんて全くない。遠い過去によって既に終わらされた彼女の物語は、安穏とした狂気の渦巻くボロアパートで、ただ金欠という現実に向かって流れていくようなもの。でもこの、後向きなのかどうかすら分からず、気力があるのかも分からない低体温な語りが本当に素晴らしかったと思います。
相変わらず余分な思考が漏れ出ているような文章なのですが、みーくんの語りに比べるとずっと読みやすい感じ。とはいえそれは、湯女の一人称に対しては私個人のシンクロ率が高すぎて、気を抜くと物語の側へ引っ張られそうになるちょっと怖いくらいの感じだったからかも。
なのであくまで個人的な印象ですが、みーくんの語りに感じた余分なものがない、洗練された文章だったと思います。この文体で、このキャラクターで、ただこの日常をずっと描いて欲しいと思ったくらいに。ラノベでも純文でも何でも良いので、この人の書くそういう小説が是非読んでみたいです。
そして、アレに関しては、まぁ、お帰りなさいとだけ。