みすぷり! / SOW

みすぷり! (メガミ文庫)

みすぷり! (メガミ文庫)

メガミノベル大賞駒都えーじ賞受賞作。
ケンカのめっぽう強い男子高校生元譲。彼の通っている高校に、「皇国」の「お姫様」な美少女ソアラが転校してくる。でも、そのソアラは昔転校していった元譲の幼馴染で、しかも元譲の記憶では「男」だったはずで……、という感じで始まる物語。
超大国の超絶可愛いお姫様に積極的に迫られて、でもそいつは確か男だったはずで逡巡して、でも可愛いからもはや性別とかどっちでも良いんじゃね……みたいな感じで落ちて行く男子高校生という、可愛ければ性別とかもう些細な問題ですよ! 的小説。読んでいる方も、こつえーイラストと相まって確かに可愛いソアラに開始50ページくらいでもうどっちでもいいじゃんと思うこと請け合いな感じ。
そしてそんな危険な一面も持ちながら、そのワンアイデアだけでは無かっただったのが良かったです。内部での勢力争いの激しい皇国でソアラが置かれた立場。あくまでも釣り餌として使われ、狙われ続け、それでも明るく可愛い完璧な人間を演じ続けなければならない人生。そんなソアラにとって、単純バカでそれでも嘘だけは絶対につかず、自分の嘘を疑ってくれた元譲という存在がどういう意味を持っていたのか。そして、元譲にとってソアラはどういう存在だったのか。
お互いがその意味に気がついたときにそこにあったのは、身分に縛られ苦しむお姫様を、愚直な白馬の騎士が救い出すベタベタに王道な物語でした。この辺りの流れは、ベタだからこその良さがあったと思います。もちろんソアラの性別は答えが出ているようで結局どちらだかわからないままなのですが、どっちだとしてもそれはそれで良いんじゃないかなと!
シンプルすぎる文章にしてもご都合主義的な展開にしても、粗を探せばずいぶんあるような気がして、特にソアラ周りの皇国やNoS関連の設定はもう少しちゃんと作りこんであった方が説得力があるんじゃないかと思うような部分もあったのですが、軽く読めてキャッチーなラノベとしては、これはこれでも良いのかなという感じの作品でした。
ソアラ可愛かったですしね!