GOSICKs4 冬のサクリファイス / 桜庭一樹

リビング・チェス大会で沸き立つ学園。嵐の前の最後の平穏な日々。GOSICKsシリーズ最後となる冬の短篇集は、終わりへの予感に満ちたものでした。
連作短編の形式で描かれる、リビング・チェス大会の様子。浮き立った空気の流れる賑やかな学園の様子の中で、セシル先生とゾフィやグレヴィールとジャクリーヌ、そして一弥とヴィクトリカの姿が、過去の事件を交えながら語られていきます。その様子は一見すればこの上なく平穏で、どこか間の抜けた感じすら漂う冬の日のひとコマで、クリマスを過ぎこれから始まる冬期休暇は、夏のように一弥とヴィクトリカだけの時間がまた訪れると感じるもの。ただ、これまでの出来事、訪れる人々、生徒たちの言葉、そういったものから、ヴィクトリカは嵐の未来を予見します。それも、もうそこまで迫っていると。
グレヴィールの髪が尖ったり捻れたりした原因の過去の事件を通じて描かれる、孤独な灰色狼だったヴィクトリカの姿と、遠まわしながらアヴリルの身を案じ、一弥とずっと一緒にこうしていたかったと言う今のヴィクトリカ。その対比が、これまで二人の築いてきたものの大きさと絆の深さを、ヴィクトリカが如何に変わったのかを感じさせて、だからこそその日常に終わりが迫っていることが感じられるのが切ないです。
愛を知らない獣のようだった欧州旧時代の最後の頭脳。東の国からやってきた黒髪の留学生。ソヴュールの中での新時代と旧時代の争い、そして迫り来る世界大戦。これまでと、今。それをもう一度確かめることで、物語はもう先に進むことしかできず、示唆され続けてきたおおきな嵐はすぐそこにまで迫っているのだと感じさせる一冊でした。あとは、最終8巻を残すのみ。たとえ何があったとしても、二人の歩む未来に幸あらんことを。