も女会の不適切な日常 1 / 海冬レイジ

も女会の不適切な日常1 (ファミ通文庫)

も女会の不適切な日常1 (ファミ通文庫)

あらすじからは「生徒会の一存」や「僕は友達が少ない」のような日常系ラブコメかと思わせておいて、読み進めればそこはかとなく富士ミスの香りがする一冊。
作者が読者にうけるものではなくて、自分の書きたいものを書いたというあとがきに思わず納得する暴投すれすれの一冊ですが、とはいえちゃんと話はまとまっていて面白かったです。そしてもうこれ以上は何を書いてもネタバレになるので、以下ネタバレ感想です。




冒頭100ページくらいまではひたすら萌えキャラ萌えキャラした女の子ハーレムな部活動の様子が描かれて若干辟易としていたのですが、そこで突然何もかもをぶっ壊すような日常崩壊が来てからの展開はまさに怒涛。世界改変とやり直しの物語は最近の流行ではありますが、この温いラブコメ日常自体が「改変された世界」であるという辺りの趣味の悪さが素敵です。
1巻は「改変された世界」が「再改変された世界」となって発生した惨劇を止めようとするものなのですが、アイの存在を考えると廻からすればこれは「守るべき非日常」な訳で、なるほど確かに「も女会の不適切な日常」。であれば当然この先突きつけられる選択に、彼がどう立ち向かうのか楽しみ。
巻き起こる惨劇の方も、ベタベタの萌えキャラをベタッと悪趣味に壊していくのが、個人的にはとても好きな感じでした。シリアルキラーサイコパスに精神崩壊に守ってあげるという依存。この薄っぺらくて安っぽくて浅ましてくどうしようもないくせに、ただどこかに切実さは感じるような狂い方が好み。この辺はもっと力いっぱい振り切って欲しかったところではあるのですが、レーベル的にはこれ以上はという感じも無きにしも。それでも、話としても繰り返すだけではなくて視点や時系列をいじったり、その背景の謎を絡めることで、読んでいて単調に感じさせなくなっていて面白かったです。
表紙やあらすじからすると斜め上の方向に突如舞い上がって突き抜けていく物語は、賛否両論ありそうというか、そういうものを期待して買った人たちからはブーイングが出そうにも思いますが、個人的には続きが読めると嬉しいなと思う一冊でした。無軌道に作者の書きたいものを詰め込んだような作品は、破綻すれすれのバランスの上でちゃんと綱渡りができていれば、露悪的な部分まで含めて大変魅力的だと思うのです。