ようこそ、古城ホテルへ 3 〜昼下がりの戦争〜 / 紅玉いづき

この巻はジゼットが主役、ということで彼女の祖国であるボルドーとそのボルドー空の独立を悲願とするケリルの会談の場にマルグリッドがなって、というお話。
ボルドーの軍服に身を包みながら祖国を捨てて一人の女主人となったジゼットの、この会談に臨む姿勢のストイックさは実に彼女らしいものだと思っていたのですが、そんな彼女にとってもボルドーという国で出会ってきた人々との関係は綺麗さっぱりと切り捨てられるものではない訳で。それでも、迷いなど表には微塵も出さず、自らのするべきと判断したことを、過不足なくきっちり遂行する姿はさすがの格好良さでした。凛々しい。
そんな彼女とともにある女主人の仲間たち。それぞれの我の強さがあり、譲れないものを抱え、それを妥協なく貫きながらも、なお仲間であり、友情があるという彼女たちの関係はやっぱり素敵でした。彼女たちも、また国を背負ってマルグリットを訪れたボルドーとケリルの代表たちも、自分自身の想いをかけて闘っていて、そういう姿勢の上でなお繋がっていく関係だからこそ、魅力的に映るのかなと思ったり。
そしてマルグリッドに宿泊に来た、やはりジゼットと因縁のあるランゼという人物。とびきりの美少女で、ジゼットに対して浅からぬ何かを持っているようで、そして……という関係の先、あと少しのところでお互いに触れそうで触れないような関係に、この二人だからこそなのか、もどかしさよりも控えるからこその良さみたいなものがありました。というか美青年な美少女と美少女な美青年って何それ本当ずるい。そして表面上はそんな感じであっても、その向こう側に決して一筋縄ではないどろっとしたものが見えるような、見えないような感じがまた良かったなと。というかジゼットは無自覚に男も女も泣かせそうです。
あとヘンリーちゃんは安定の不憫でした。人の言葉を忘れないように気をつけて……!