スカイ・ワールド 03 / 瀬尾つかさ

スカイ・ワールド3 (富士見ファンタジア文庫)

スカイ・ワールド3 (富士見ファンタジア文庫)

かすみにエリ、そしてユーカリアを加えてジュンのハーレムパーティーっぷりがやばいと思っていた冒頭からショタっ子召喚士捕まえやがった! と思っていたらちょっと別方向の展開を。とはいえ、ハーレム増強には余念が無いわけですが。
そんな訳で召喚士のヒカルが登場して、舞台は第五軌道エルフの王国スウィトネヴル。イベントを作り出す能力を持ったNPCであるキーサンドラ姫とクエスト研究に暗躍するジュンという話から、敵の襲撃で事態は急展開を。
NPCNPCではなく、スカイワールドがゲーム世界であってゲーム世界ではないというのがもうほとんど事実のように思えてきた中、エルフの国の王女キーサンドラと交流を通じて、彼女たちにとっての「冒険者」の在り方が見えてくるのが面白いなあと。異世界への来訪者である冒険者が、けれどゲームシステムに則って動くという重ね合わせの世界構造だからこそ、ゲーマーなジュンの世界考察がゲームシステム考察とイコールで結ばれる。そんなネットゲーム攻略と異世界ファンタジーの融合が新感覚。そしてその部分を突くような事件を起こしてくるのが上手いなあと。基本的に理屈で詰めていくような話の作りをしているのが個人的にはとても好みです。
そして、ジュンのハーレムパーティーっぷりの都合の良さはありつつも、鈍感主人公だからな訳ではなくて、皆が皆色々分かりすぎてしかも頭が良いが故に考えて動けなくなっている均衡状態だというのも面白いところ。かすみの真っ直ぐなアピールはともかく、エリの頭が回り過ぎるが故の歯がゆさみたいなものや、ヒカルの達観っぷり、そしてジュン自身が好意を向けられていることは分かっているところまで、色々と火種を抱えたままで居心地のいい環境が形作られているのが今後どうなっていくのかと思ったり。
そんな理屈先行の物語でありながら、謳われるのは友情と勇気、信じる心であるというのがまた良いです。人を信じられずにきた者たちの集まったパーティー、だからこそ仲間を信じることに向こう見ずなくらいに全力になれる。自分が信じて、人に信じられる、だからこその仲間。ユーカリアを巡る事件の結末はまさにそこに尽きるという感じで、これは無邪気なくらいにそれを謳う物語なんだと感じました。