メイドインアビス 1-6 / つくしあきひと

 

 人類未踏の巨大な縦穴アビスの底を目指す、探掘家の少女と遺物の少年のワクワクドキドキ冒険譚……うん、まあドキドキはしますよね、ちょっと意味が違いますけど。

未知の生物や遺物に溢れ上昇するとアビスの呪いと呼ばれる症状が現れる大穴や探掘家を始めとした設定や、深度が変わるごとに全く風景を変えるその見たことがない世界を描き出す説得力。大穴のふもとにある街での暮らしから、母を追って穴に飛び込むリコたちと孤児院の仲間たちとの別れまで、ちょっとした瞬間に生活の匂いがしそうな描写も素晴らしいと思います。思いますが、それ故にその描写力が、アビスの底に向かうごとにエグさとなって襲い掛かってくるの本当にですね、えげつなく精神力削っていきますねこれ……。

2巻で白笛オーゼンを酷い人だと思った(後で良い人だと思い直しましたが)のが遠い過去に思えるくらい、加速度をつけてエグくなっていく世界。白笛ボンドルドのネジのハズレ具合も環境そのものの持つ狂気も、たぶん単純にアビスの深層は人の在るべき世界ではないということなんだなと。真っ当な人間なら近づかない、近づくべきではない世界。アビスに近づいたことがそもそもの誤りなんじゃないかと思うような。

じゃあこの作品どこで道を外しているかって言えば、多分最初にアビスの説明が入った時点なんじゃないかと思うのです。上昇負荷の説明で予想以上に酷いものを見せらた時点で、それでも無邪気に穴の深部を目指したがるリコ。その姿に読んでいて疑問がなかったと言えば嘘で、それでも、立ち止まれないから憧れなんだと思っていましたが、ここまで読んでくると、それすらアビスの何らかが働いているじゃないかと思えてしまうのが何とも。

特にそう思うのは第6層突入後。明らかに人の理で解せない世界から触れてはならないというアラートが強烈に伝わってくる感じ、ちょっと凄いです。もはや試練だとか厳しい環境とかそういう次元ですらないように思えるのに、彼ら彼女らに退路はなく、もちろん引く意思などこれっぽっちもないという。人を捨てていたボンドルドがまだ理の分かる狂気だったというレベルの何かが、1巻からここまでに散りばめられた要素を一つの得体の知れないものに繋げていきそうなこの危機感は、ヤバいとしか表現しようがなく。

そしてそんな彼ら彼女らの冒険の描写もかなりキています。当然世界が世界だけにそのグロさもエグさも半端ないのですが、そこにロリショタケモ男の娘に人体欠損、四肢切断その他もろもろ投げ込んでくる闇鍋感。ストーリーも設定もそういった描写も、どこまでも濃い作者の業を煮詰めたような何かに仕上がっていて、あらゆる意味で気を確かに持って向き合わなければ引きずり込まれる、そういう力を持った作品だと思いました。凄い、ですがここまでくると怖い。

しかしまあ読み進めるほどによくこれアニメ化にゴーサインが出たなあと。今丁度オーゼンのところが放送されていて、この先を映像化? しかもテレビで放送? 正気?? みたいな気分になるのですが、果たして……。