【ゲーム感想】ゼノブレイド3

大変面白かったのですが言いたいことがあるというか、具体的にはサブクエストやヒーロークエストが滅茶苦茶面白くて、それ故にメインストーリーのラストにどうしても納得がいかなくなるという、なんとも難しい気持ちになるゲーム。でも出来は間違いなくシリーズで一番です。クリア後のクエストまで全部潰して122時間、存分に楽しませていただきました。

 

何を書いてもネタバレを避けようがなかったので、以下ネタバレありで。

 

 

 

 

 

 

 

1の世界と2の世界が一つになったようなアイオニオンという世界で、人々は10歳程度の身体で生まれてきて、10年間の限られた命を戦争に明け暮れるという設定。1の世界の人々が属するケヴェスと2の世界の人々が属するアグヌスという国に別れての戦いは、命の灯時計と呼ばれる装置に相手の命を捧げないと生き続けられないという制約を課されて終わることなく長い長い間続いており、たとえ10年の時を生き抜いたとしても女王の前で天に帰る成人の議を迎えるだけという、どう考えても酷い世界が舞台です。

そんな戦場で出会ったケヴェスの兵士ノア、ユーニ、ランツとアグヌスの兵士ミオ、セナ、タイオンはある出会いからウロボロスと呼ばれる存在になることで闘い続ける運命から外れ、アイオニオンという世界を支配するメビウスたちからの解放を目指して旅をするというのが大まかなストーリーライン。

この世界は何がどうして生まれたのか、メビウスとはいったい何者なのか、メリアやニアにしか見えない女王は何なのかといったたくさんの謎を抱えたまま進むストーリーですが、まずはパーティーメンバーの6人がいい奴らなのが冒険をしていて良いところ。大学のサークルみたいなノリで旅をしている感じが楽しいです。イベントシーンもですが、休憩ポイントで入る日常描写がいい味を出しています。

全体的な雰囲気としてはベタベタにアニメノリをしていた2から、ぐっと落ち着いた雰囲気になっていてその点間口は広がった感じ。ただ、世界設定の特殊さと、大きなテーマになってくる「命」が、10年を闘うこと=生きることのケヴェスやアグヌスにおいては普通の感覚とはズレているところもあって、のみ込みづらいところはあると思います。特にシティーで「普通」の人生を送る人々が出てきてからは、この感覚のすれ違いが味になっているところもあったりしますし、この前提をどれだけ受け入れられるかで、ストーリーに入り込めるのかが決まってくる感じはあるので、取っつきづらさはあるゲームと感じました。

 

このゲーム最大の魅力は、アイオニオンに点在するコロニーに配置された大量のクエストと、そこの軍務長が仲間になるヒーロークエストだと思います。メインストーリー上は必須ではないものですが、これがまたものすごい大量に用意されていてしかもどれも魅力的です。最初はこんなに数があってキャラクターも多くて覚えられないよと思っていたのが、気が付くとみんなに愛着が湧いているので凄いと思います。

アイオニオンの人々は10年を闘い続けることだけのために生まれてくる。なので、最初はそういった価値観だけをもって戦って死んでいく存在だと思っていたのです。序盤のノアたちの周りの描写もそういうイメージですし。だから、コロニーを命の灯時計から解放して、逆にそんなことをしたらこの人たちはどうやって生きていくんだろうとさえ思っていたのですが、色々なコロニーを解放してくると違うんだということが分かってきます。どのコロニーだって同じものは無く、同じ価値観の同じ人がいるのではなく、たった10年の人生をそれぞれに考え、色々なことに挑戦しながら前に進もうと生きている。ヒーロークエストを通じてコロニーや軍務長たちの人となりを知り、数々のクエストやヒーロー覚醒クエストを通じて、彼ら彼女らが抱えた問題にどう対処したり、他のコロニーとの連携を取るようになったり、何を抱え何を目指して変わっていくのかを見届ける。それは、アイオニオンというモノクロのイメージの世界が色づいていくような、ここにも確かに生きている人たちがいて、営みがあるのだということが実感として刷り込まれていくような感覚でした。気が付けばもう滅茶苦茶に愛着が湧くわけですよ。

そしてまあそれだけに、メインストーリーのエンディングにちょっと言いたいことがあるというか、アイオニオンは確かに成り立ちの良くない、2つの世界の消滅前の瞬間を永遠にして生まれた、メビウスの支配から逃れられない世界ではあるけど、本当にそれしかなかった??? みたいな気持ちがですね。未来へ進むために必要なことは分かるけど、この世界を搾取で成り立つ停滞でしかないと断じて信じて踏み出す必要性も分かるんだけど、他にやりようなかった? って思うのです。だって、こんな酷い世界の中でも、みんな確かに生きているってことをあの大量のクエストの中で体感してしまったんですよ。世界を消して元に戻しますかっていう問いに、たとえイエスというのが正しかったからといって納得できるのかというね。

このやり口自体はイーラでもやられたなあと思いつつ、あれはそういう悲劇だった訳で良くはないけど良いのですが、今回は未来への正しい選択として、愛着の湧き切った世界を消すことを求められるのがどうしても飲み込めないなあという素直な感想があります。ゼオンが苦労して育てて布教を始めたイモは? 幾度かの学級会を経てようやく立ち上がり始めたコロニーミューは、育ててたアルマたちは? ルディはドルークまた作るんじゃなかったの? エセルを失ってもようやく一つにまとまって進み始めたコロニー4は? ナギリ達に名前を付けてあげて刑務所改装してコロニー0はこれからっていう時じゃんだとか。

いやまだコロニーは、兵士が補充されなくなればどのみち10年で滅んでいたし、オリジンによる再生で元居た場所で再び生きていくのだと思えなくも、なくもない。死生観という面では、死亡して再生された後の同じ人物に記憶の連続性が無くても同一性を見ている気があったので、そういうものなのだと思えなくもない。……けどシティーはダメでしょう。オリジンからの再生ではなく、アイオニオンで生まれた命である以上、世界の消滅と再生を経ても元の世界では消えてしまう訳で、大恩あるシティーがそうなることを是とすることはできないでしょ。シティーの人たちはそうなるためにメビウスと闘ってたっていうのかと。だってじゃあ来年の料理コンテストはどうするんだよ、ジャンセンのモニカへの告白は、ロメロとジュリエッタは、子供たちはどうなるんだよ、この戦いが終わった先のことを話していた人たちはどうなっちゃうんだよ、だったら保守派の言う通りだったんじゃないのか等々、こう大分いろいろ言いたいことたくさんありましてね……。

いやそもそも、あれだけ大団円で終わった1と2の世界がぶつかって対消滅しますって言いだした時に誰か止めなかったのかと言いたくもあり。いやまあメインストーリー面白かった、面白かったんですが。捕らえられてからミオの成人の議のところの6話らへんの流れ、エヌとエムの辺りの話は素晴らしかったですし、終盤へ向けての盛り上がりもちゃんとあるし。だけどなあ、でもなあという、何とも言えない気持ちの残るお話でした。追加ストーリーでみんな救われるトゥルーエンドくれないかな、2の豪快なハッピーエンドを実現したシリーズなんだからそのくらいやってくれないかなと、期待だけしていようと思います。

あとメリアとニアは前作プレイしている人にはうれしいお楽しみ要素でした。メリアちゃんは流石の威厳を見せていて、ニアは柄にもなく無理しているところとボロが出るところが可愛かった。最終決戦の二人の頑張りと、エンディングでニアに駆け寄ってきたハナは前作やっていった人だけの感動ポイントだったかなと思います。ニアに関しては、見た目があんまり変わっていないので(マンイーターで長寿なので)、子供いるの??? っていう驚きが例の写真でありましたが。

 

 

ゲームシステム的には2、DEをベースにチューンした感じで、過去一遊びやすいですし、本当にストレスなく遊べるのでやり始めるとついつい止まらなくなります。シリーズの特徴であるマップも過去最大に広くて探索しがいがありますし、マップが踏破で埋めていく方式なのもやる気が出るポイント。クエストも一個ずつの内容や長さがちょうどよくて、何しろ本編上は寄らなくても良いコロニーがたくさんあって、それぞれに膨大なクエストが用意されてそれぞれの物語があるのが良かったところです。

バトルシステムはいい加減にやっていてもなんとかなるけど、クラスとアーツの組み合わせが無数にあって戦略を考えて詰めればいくらでもやり込める作りで良き。クエストをやり過ぎて適正レベルをずっとぶっちぎっていたのでバランスは何とも言えないのですが、ただ殴っているだけでも闘っている感じと達成感があるので飽きが来ないものになっていたと思います。

今回は笛の音をフューチャーした音楽も相変わらず良いですが、「命を背負って」はもっといろいろな場面で聞きたかったのと、ボス戦BGMの記憶が大体全部チェインアタックに塗り替えられるのだけちょっと不満ではありました。

 

 

そんな感じでいろいろ言いたいことはあるのだけれど、とにかく120時間以上最高に楽しめたというアンビバレンツな感想の残ったゲーム。あとは追加コンテンツのストーリー待ちですが、「繋がる未来」も「黄金の国イーラ」も素晴らしい出来だっただけに、期待をしていたいと思います。