2022年の振り返り その2(映画・アニメ・ドラマ・小説・マンガ・音楽)

今年の映画・アニメ・ドラマで良かったのは何だろうなと思うと、やっぱり「すずめの戸締り」なんじゃないかと思います。新海誠の集大成にして最高傑作の看板に偽りなしの作品で完成度が高く間口も広く、そして何より失われていく世界に生きる物語なこと、そしてその中ですずめを何が救うのかがとても良かったなと。

あと、あまりに秘密主義過ぎて様子見していたものの評判の良さに映画館に足を運んだ「スラムダンク」が最高のスポーツエンターテイメントというものを見せてくれて凄かった。原作者の頭の中にだけあったものが、原作者が陣頭指揮を執ることで映画として顕現したという趣の作品でした。

他に映画ではうたプリの映画が映画=ライブ作品の最高峰のクオリティだったのと、滅茶苦茶分かりやすくなったが故に宗興みの増したピングドラムが印象に残った感じ。「シン・ウルトラマン」はメフィラスが最高だった。

 

そしてそのメフィラスこと平六の出る「鎌倉殿の13人」が滅茶苦茶に面白かったです。大河ドラマを見るのなんて何十年ぶりとかで、これも大変に素晴らしい出来だったアニメ「平家物語」と併せて見ると平家と源氏の両面から見られて良いと聞いて見始めたものでしたが、三谷幸喜は本当に凄かった。

粛清粛清&粛清の地獄のような鎌倉とちょっととぼけたギャグの塩梅の良い大河ドラマなのですが、史実を下敷きにしているのに、その隙間を膨らませながらそれぞれの登場人物がそれしか取り得ない行動を選択する結果として関係性と事件が編まれていくのが、どうやったらこんなものが組みあがるのかと。冒頭から通底する北条家のファミリー・サーガとしての一面が、紆余曲折を経て最終盤の政子と義時の選択と行動に繋がってくるのが凄みを通り越して怖ささえありました。登場人物の存在がブレてないというか、こういう人たちがこういうふうに生きた結果としての納得性と史実であることの担保をしながら、その上でこれ以上ないシーンがバチバチに決まって来るの、大河の尺があるからできる、もの凄いドラマだったと思います。毎週地獄が過ぎてみるのが辛いんですが、それを超える面白さがあって、本当に最後まで見続けて良かったです。

それとNHKは、70年代に存在しなかったはずの特撮番組を生み出して現実を侵犯する「タローマン」も狂った企画で面白かった。「タローマン ヒストリア」に至ってはこうやって人を洗脳していくというカルトの手口みすら感じて怖かったです。なんにしても今年は放送料のもとは十分にとったと思います。

 

アニメだと、あの地獄のようなイルぶる編を見事にアニメにした「メイドインアビス」も凄かった(久野美咲のファプタがやばかった)ですし、人気の出た作品はやっぱり面白いんだよなと「SPY×FAMILY」「水星の魔女」「リコリス・リコイル」「異世界おじさん」などを見ていると思うのですが、鮮烈なインパクトという意味では今年は「アキバ冥途戦争」しかないでしょう。

アキバのメイドに極道を重ねて、メイド喫茶間での抗争とそこで生きるメイドたちの生き様を描く作品という時点で既に狂っているのですが、1話からぶっ飛んだギャグと血と暴力とメイドが混然一体となって、最初はいったい何を見せられているんだと。ただ、何話か見ているうちに引き込まれて、任侠ものとしての側面がフルスロットルになる6話辺りから加速して、最後までノンストップで駆け抜けた感じでした。

特に11話に暴力の行き着く先、因果が巡る任侠ものとしての最終回を持ってきて、その暴力を萌えという非暴力で塗り替えるための12話最終回の二段構成になっているのが凄まじい構成。最終話なんて、普通に見たら気が狂ったような絵面が延々と続くのですが、それは作品のテーマもキャラクターの生き様も完璧に描き切った結果として出力されたものだと理解させられるので、頭がおかしくないと出来ないわこのアニメと圧倒されました。任侠の生き様とメイドの生き様を描くのは、アイドルの生き様を描いたゾンビランド・サガのサイゲの企画だなあという感じで、万人に刺さるか分からないですが、気になる人は最終話まで見て欲しいなと思います。1話だけ見てもなんだこれだと思うので……。

 

あとは、今年の小説だと「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」が身体性を突き詰めて人間性というものを削り出すような執念を感じる一冊で凄かったのと、「ゴジラ S,P」がアニメとは別視点の断片を集めたような変な小説だけど読んでいると滅茶苦茶面白いという不思議な読書体験だったのが印象的。あと「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 2」が良いスペース漁業SF百合でした。「少女を埋める」は、生きるためには声を上げなければならないという覚悟を描いた短編に対して、まさにそういう声を上げざるを得ない書評が来たことで、「やるんだな、今ここで!」となるメタフィクションめいた勢いのある一冊で、なんというか、ある種凄かった。

 

マンガだと「メダリスト」がまあもうとにかく図抜けて面白いです。フィギュアスケートに詳しくなくても競技会はものすごい面白いですし、練習も描写も面白くてもはや無敵。この熱量と繊細さでこのペースで連載して身体壊さないでくださいねと余計な心配をしたくなるような作品です。最高のクオリティでアニメ化してくれ。

あとは連載を追いかけることで得られるドライブ感が最高だったのは「タコピーの原罪」。体験として強かった。ジャンプ系だと「株式会社マジルミエ」がお仕事もの×魔法少女で新人作とは思えない完成度なのでこの先も楽しみ。あと、「鍋に弾丸を受けながら」は脳がやられているためすべての人間が美少女に見えるというパンチのきいた設定もありつつ、世界をめぐるグルメマンガとして面白かったです。

あとアニメ化も決まったU149は相変わらずキャラクターの描き方が冴えに冴えていて最高です。アニメはマンガの通りにはやら無さそうなので、期待値は下げつつ来年の楽しみにはしていきたい所存。あと、せっかくアニメにするんだから書店流通だけ何とかしろサイコミって思い続けています。

 

音楽だとアニメとのマッチングも含めて「花の塔」「かたち」「祝福」が良かったなあと。それから毎回EDが変わる話題性もあったチェンソーマンの「KICK BACK」「first death」は米津天才だなあ、TK天才だなあと感じる曲でした。あとリメイクされたうる星やつらの「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」がめちゃめちゃ良い曲で、レトロポップな世界観にも合っていて良かったです。

それとアイマス系でミリオンの「Clover’s Cry」がなかなかぶっ飛んだ曲で凄く好き。シンデレラだとナターリアの「ソウソウ」とユニ募の「UNIQU3 VOICES!!!」が明るいのにエモくて良き。

アルバムだと緑黄色社会の「Actor」が良いアルバムだったなあと思います。凄くスタンダードで、個性もちゃんとあって、凄く聞きやすくて魅力的。あとキャラソンでPhoton Maiden「4 phenomena」がコンセプトが明快で凄く良かったです。