悪魔の孤独と水銀糖の少女 / 紅玉いづき

 

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

 

 愛して、願いをかなえるために、悪魔の住む呪われた島にやってきた、美しい死霊術師の孫娘シュガーリア。正義の名のもとに迫害され、やがて滅ぼされた彼女の爺様、婆様である死霊術師たち、その復讐のために。

美しく傲慢で、甘やかで残酷で、柔らかくもその生き様はただ苛烈で。愛されることを当然として、愛することを求め、己が想いを叶えるためには手段を問わない。あまりにも生から遠く死の匂いが濃厚な、既にあらゆる意味が剥奪された終わってしまった世界の中で、彼女が彼女であるために闘い続けるその精神だけが、強烈なエゴを纏い輝いているような、そういう印象を受ける物語でした。

 

以下ネタバレありで。

 

 

 

 

シュガーリアの在り方は、あまりにも美しく高潔で、ただ人の身にはあまりにも純度が高すぎるように思いながら読んでいました。そんなふうに在りたいと思っても、どう考えても形がついてこないというか。死霊の魂を喰らて捻じ伏せ、悪魔背負いにさえ「お前は人間か」と問われる、既に超越した何かというか、血に塗れたとえ形が崩れても、ただその精神性だけでいつか果てるまで闘い続けるような、そういうタイプの純度の高さ。それはもはや、概念としての少女で。

それはまあ、舞台であるこの死んだ島と、死霊術師である彼女の生い立ちに起因する、生物としての形への執着の薄さみたいなものかなと思って読んでいたのですが、そうか愛玩人形か、そうか、それは、その通り過ぎて、あまりにも正しくて、何もコメントのしようがないなあと。

少女という概念は人形の形をしている。傍らに悪魔憑きの男を侍らせながら、永劫の時を、純然たる異端として。これはそういう物語なのだなと感じて、ああ私これ滅茶苦茶好きなやつだと思いました。いや、ほんと、好きです。