【ゲーム感想】ユニコーンオーバーロード

SRPGはどうも苦手なのだけど、ヴァニラウェアは「十三機兵防衛圏」がとんでもない名作だったのでと思って5時間遊べる体験版に手を出した結果、終わった頃には本編予約していたユニコーンオーバーロードです。約1ヶ月かかりきりになって76時間で難易度はTACTICALのトゥルーエンドまで終わらせたのですが、いやこれ本当に良いゲームですね。面白かった……。

内容的にはあれもこれもと要素を詰め込んだ「ぼくのかんがえたさいきょうのSRPG」的なゲームで、そうだよねそれができたら嬉しいよねをこれでもかと詰め込んでいるのですが、それがちゃんとゲームの面白さとして一つの方向を向いて、バランス面も奇跡的に成立しているので言葉を失うというかなんというか。「十三機兵防衛圏」もそういう類の「それができれば面白かろうが気が遠くなるし普通の会社なら誰かが止めそう」なゲームだったのですが、これもまさしくそれ。作り込みと情熱がちょっとおかしいので、開発に10年かかったってそれはそうだろうというか、その間もっとシンプルにして出しましょうよってならずに真正面から気合と根性で作り切る社風が怖いわって思います。結果として凄いものができて遊べるので、ユーザーとしてはこんなに有り難いことはないのですが。

 

さて、私がSRPGが苦手なのは、1マップが長くて後半煮詰まってくると段々しんどくなってくるところだったのですが、このゲームの良いところはかなりサクサクと進んで消化試合を感じないところ。戦闘はオートだし、移動も停止と二倍速ができる。他にも戦闘前には予測ダメージがほぼ正確に出るし、戦闘前の近隣ユニット入れ替えだとか、拠点に戻れば別拠点にワープできたりとか、細々とストレスを感じさせない仕様になっているのが良い感じ。

でも、ライトで甘やかされてるゲームなのかというとそれは大間違いで、プレイヤーをやるべきことに集中させて、それにあたってあまりに難しくなり過ぎず、変に手間がかかり過ぎないための仕様だと感じます。じゃあプレイヤーのやるべきことって何なのかというと、このゲームは「仕組みを作る」ゲームなのかなと。全てがそのために作られたシステムであり、そしてそこに深い深い沼があるという。

 

「仕組みを作る」ゲーム

このゲーム、ゼノイラという帝国の支配から大陸を救う解放軍の物語なので、最大で5キャラ×10ユニットの部隊を編成して、リアルタイムで移動させながら敵の拠点を落としていく形です。そしてそのユニット編成こそがすべての肝。キャラごとに何十も存在するクラスには有利不利があって、その組み合わせを前列後列のどこに配置するのか、様々な効果を持つ装備を誰にどうつけるのかまでが基本。この時点でどうやっても必ず強いユニットというものは作れなくて、どんなに強いクラスにも勝てない相手がいるというのがバランスの妙になります。

物理攻撃には圧倒的に硬いクラスのホプリタイは魔法攻撃の前ではバターのように溶けるし、魔法使いをはじめとする歩兵を蹂躙する騎馬部隊はグリフォンナイトの前になすすべもなくやられる。そのグリフォンナイトは弓兵相手にいとも簡単に落ちる……みたいな関係性。それをバランスよく組み合わせて爆発力は無いがある程度万能な部隊にするのか、相手を特化した組み合わせにしておいて運用でカバーするのかが悩みどころ。でも特化させて上で相互補完のためにまとめて部隊を動かそうにも移動速度が合わなかったり、まとまって動いてたらマップ上のギミックやブレイブスキル(マップ上で使えるスキル)で一網打尽にされたりと、どうやっても解けるけれど絶対の最適解が無いというのがとにかく面白いポイント。だからやった人の数だけ解法があって、それを模索してああでもないこうでもないとすることがなんと楽しいゲームなのか。

 

そしてここまででも気が遠くなるほど様々な組み合わせが試行できるのですが、このゲームの本体というか、最大の肝になるのは「作戦」と呼ばれるシステムだと思います。

戦闘がオートであるこのゲームで、キャラクターがどのように動くかを設定できる行動パターンが「作戦」なのですが、これほぼNPCの戦闘アルゴリズムを作る機能。キャラクターの持っているスキルに対して実行条件をかなり細かく設定可能な上に、その優先順位をつけられるので、まず一人のキャラとしての行動の最適化だけでもかなり考えることがあります。そしてこれが部隊の単位になると、誰が誰にバフをするか、攻撃をカバーするか、どういう行動にシナジーがあるのか、役割は被っていないかなどなど考えることは飛躍的に広がっていきます。更に装備によってできることが変わったり、クラスチェンジでできることが広がったり、相手部隊への対策を組み込んだり、部隊間のバランスやマップ上でできるブレイブスキルやアイテムの仕様まで前提に組み込めば、できることはほぼ無限と言っても言い過ぎではないかと。

この作戦はデフォルトのままでも十分遊べるのですが、これが上手く動くかどうか次第で、同じ編成であっても与えるダメージや受けるダメージが大幅に変わってくるのが一番面白いところ。そうなってくるともう無限に作戦を弄りはじめ、編成画面を開いているだけで1時間たっていたみたいなこともざらにあります。特にこのゲーム、戦闘の後に新たな仲間の参加や雇用、フィールド散策(新装備の入手)、クラス開放や編成拡大が待っているので、戦闘→フィールド散策→再編成→戦闘でサイクルが回り始めるとやめどころを見失います。新しい街が出てきたら装備を買って試したいから次の戦闘をやったら仲間が増えて新しい編成を試したいから戦闘をして……のエンドレス、気づけば時間は溶けてなくなる沼の中という中毒性が凄いです。たのしい。

 

この「作戦」が中心になったシステム、もちろん本番は実際の戦闘になるのですが、ゲームとしてやるべきことはどちらかというと編成の方にあると私は思っています。というのも、このゲーム、オート戦闘中のランダム要素がものすごく少ないんですね。もちろん命中率等の関係でまぎれはあるのですが、基本的には整然と作戦で定められた行動をキャラクターが取っていく。本来であれば人間には調子や士気もあれば言うとおりに動かないやつもいるはず……ですがこのゲームはそんなことなくてすべからくみんな超優秀です。だから、こちらの立てた作戦がほぼ全てであって、そういう意味では非常にピュアな戦術ゲームになっています。

そうなると、再現性が高いのだから大事なのは事前の準備です。もちろん戦闘中の部隊操作やスキルやアイテムの切りどころなど、プレイヤーが即興で対応しなければならないこともありますが、大部分は編成画面を開いてうんうん唸っている時間によって決まっていると言っても過言ではありません。キャラクターの行動一つ一つから組み上げた戦術が、想定されるパターンを読み切って思った通りに動く時の快感。思った通りに動かなかった時のトライアンドエラー。新しい玩具が手に入った時にそれを仕組みの中にどう組み込むか。それがこのゲームの本質で、そういう意味で仕組み作りのゲームなのだと思います。そこが好きな人には徹底的に刺さるゲームになっていると感じました。

 

それでもって、いくら言っても言い足りないくらい凄いのは、この果てしないバリエーションを生み出せる仕組み作りのゲームが、どういう方向性で何をしてもかなりいい感じのバランスになっているところ。大体の仕組みは振れ幅がゲームを壊すほどではないところには収まるし、でも十分な達成感を感じるくらいには劇的に効いてくる。組み方次第で全然違う挙動をするのだけど、私が思いついて触った範囲では明らかにおかしいでしょこれってなることはほぼ無かったです。これは強すぎるでしょみたいなところも必ず弱点はあるし、何に使うんだろうと思っていたものにもいつかは役に立つところがある。これをクラスと装備と作戦とetcetcな要素の倍々の組み合わせの中で成立させているの、どういう魔法を使ったのか謎過ぎます。

ぶっちゃけ好きに移動して順番は選べるけどレベルの問題でほぼ行動範囲は決まるフィールドをオープンワールドと売りにするよりも、こっちの方がよっぽど開かれた世界だと思うんですよ(セールスポイントにするにはやってみなくちゃ分からない部分すぎるのですが)。そしてそれが常に良い感じで破綻しないヤバさ。「十三機兵防衛圏」の時系列の時も同じことを思ったのですが、ヴァニラウェアの職人技というか、執念すら感じる何かでした。

 

気が付いたら好きになっているキャラクターたち

システムの話ばかりをしましたが、このゲーム、ストーリーは先述の通りゼノイラ帝国の支配から大陸を救い出していく超王道の英雄譚になります。面白いですがびっくりするようなことがある訳ではなく、キャラクターも数が多くてイベントでもそこまで深堀りがある訳ではないです。なので、そこまで語ることはないと思っていたのですが、なんかこう、そんなキャラクターたちに愛着が湧いてくるんですよね、遊んでいるとじわじわと。

それを実感したのはエンディングでした。このゲーム、各キャラごとにちゃんと後日譚がつくんですよ、その後どういう人生を送ったかの。私が後日談大好き人間(せっかく何か成し遂げたらそれによって良くなった世界が見たいじゃないですか)なのもあるのですが、それを読んでいたら、我らが解放軍の仲間たちどうだ凄いだろ、自慢の仲間たちだからなという気持ちが膨らんできて、あれ思ったよりこのキャラクターたちに思い入れあるなと。

正直今クリアした時点では大量に用意された親愛度会話もろくに読めていないし、イベント自体で語られるのもほんの断片的な話だけです。途中までキャラが多すぎて名前も覚えきれないと思っていたくらいには。でもどこでこんなに愛着が生まれたのだろうと思うに、これもやっぱりシステム面での要素が大きいのかなと。

まず、編成画面でキャラクターのことを考えてる時間が滅茶苦茶長い。とにかく誰と誰を組合わせて、どういう行動をとってもらってと考えているので、やればやるほど思い入れが生まれてくるのです。あいつは何が得意で、この時こうしたのが強かったとか、弱点もあるけど玉に瑕だよねとか。そして戦闘がオートであること。自分で操作をするのではないから、主人公のアレインも含めて解放軍で一緒に戦う仲間たちみたいな感覚が醸成されてきて、それが各々が各々の道を歩みだしたことを知れる後日譚を読んだことで爆発したんじゃないかと思いました。

 

ちなみに、一番好きなキャラクターはメリザンドです。これはもう出会いのイベントからいい性格していて最高だった。そして長らくソードマスターの活かし方が分からず困っていたのですが、最後の最後にガレリウス戦でまさかの大活躍(メテオスラッシュによるバリア剥がし)をして、流石アレインの嫁! やはり正解はメリザンド!! ってなりました。ほら、他国とは結構いい感じの関係を築いてるし、ここは国内大貴族との婚姻で地盤固めが必要ですし……。


ちなみにですがこのガレニウス戦、今までの部隊編成じゃ歯が立たないうえに戦闘ごとに150くらい回復するせいでいかんともしがたくなったのですが、あれやこれや編成をいじっているうちにほぼワンパンで倒せる組み合わせが見つかったのが、最高にこのゲームの美味しいところって感じで、ラスボス(正確には違う)戦として圧倒的に正しいと思いました。

嫁がバリアを剥がして物理防御低下とガード不可を載せてアーマリアが殴るパーティ

 

余談ですが、他に編成で最高に気持ち良かったのは、闘技場アーマリアの攻撃をフェザーボウのシャイニングで完封した時。完璧にハマった瞬間ベスト1。

初撃とHP50%以下で使ってくる攻撃をそれぞれ暗闇で回避する編成

 

最終局面での編成と感想

最後はせっかくなのでコルニアの最終局面での編成を。振り返ると最終的にはストーリーに引っ張られたり雑さと妥協が見え隠れしたりで、恐らく突き詰めればこれ以上に効率の良い編成はいくらでもありますが、まあそれはそれ。

 

アレインは攻防全てで雑に強かったのでかなり適当な編成。エルトリンデを回復に専念させれば大概どうにかなる。グリフォンルーラーは序盤から終盤までずっと火力が有能すぎて唯一使っていた傭兵です。敵に弓兵が混ざっていると落ちるし、アシスト射撃でも落ちるのはご愛敬。

 

セレストが結構後半で仲間になって可愛いから使いたいと思ったものの、余り人員では上手く編成が組めずに最終的にこうなったというやつ。グリフォンルーラーは前にいても後ろにいても落ちる時は落ちるしなという割り切り。火力はセレストと後ろの砂漠コンビがどうにかしてくれます。

 

遠隔攻撃さえなければ無類の強さだった主力魔法部隊。ヤーナでテレポートしてきて拠点をつぶすのがお仕事。フォーカサイトを載せて手数で勝負という感じでした。オーシュ君はたぶんこのゲームで一番可愛い。前衛はベレンガリアが強くて5人目解放した時どうしようかと思ったけど、ここは弟でしょとトラヴィスを暗闇付与係にして安定感アップ。ベレンガリアとトラヴィスはこの叙事詩タッチな物語で何か妙に二人の世界というか湿っぽい姉弟でした。
あと、スカーレットさんは教皇にならないといかんからねと思っていたら、後日譚でサナティオに教皇の座を任せてパレヴィア島の一司祭になっており、フローラ選んだ時のビアンカじゃん! と叫びました。ごめんて。

 

こちらは主力騎馬部隊。後半に入るとグレートナイトが前衛に置くと結構やられるので、もういっそ後ろに並べればいいのではと思って編成したもの。回復役で前衛におけるのが他におらずセイントナイトですが、モニカとクライヴが並んでよい感じ。
正直これを組んだせいで全体の戦力バランスが崩れた時期がありましたが、ナイト3枚並べてキャバリエ―ル多重掛けの圧倒的火力にあらがえざる魅力がありました。アデルに魔法槍を付けて、横一列の魔法攻撃で重装兵を落とせるのが隠し味。そのおかげでどんな相手でも雑に出して雑に強く、足も速いので切り込み隊長として申し分のない部隊でした。

 

バストリアスのイベントを最後まで見たらユニット開放して組みたくなっちゃった獣人部隊。4人編成の時は安定しなかったのですが、5人になってベルトランを置いたら安定しました。モラードに必中つけてグランドスラムするのがメイン火力と思っていたけどなかなかうまくいかず。スノーレンジャーはシンプルに強かったです。
バストリアスのイベント、獅子王がモラードをバストリアスブルーで獅子獣人にして、ユニフィは実は……というの、身代わりにした意味合いがあったんじゃないかと思うものの、そこはおそらく分かってても飲み込んで家族になるのが良かった。

 

ドラケンガルドで各部隊編成から抜けて仇敵憎しで猪突猛進した薔薇騎士団の皆さまです。お前そんなことある? ってなった。そんなに言うなら薔薇騎士団にしといてやるよって思ったのですが、意外とバランスよく何でもできる部隊でした。前二人が耐えて後ろで攻撃するバランスも良く、キトラが列攻撃覚えてから特に強い。ヴァージニアは反撃スキルが強いまさしく脳筋プリンセス。5人目はリアと迷ったけど万能バッファーのギルベルトで更に安定。今後もコルニアとドラケンガルドの友好のため、末永くお幸せに。

 

どう使えばよいのかよくわからなかったオクリーヌが回避盾なんだなと気が付いてからちょいちょい使っていた部隊。命中率高いメンバーで組んだものの絶対火力が足りずなんとも帯に短したすきに長しな感じでしたが、飛行ユニットなのを生かしてあっちこっちでギミックを動かしたりと雑用をこなしてくれました。戦闘後にクロエでパーティーエイドをかけて、リナゴラスのシェアヒールで必ず全回復するので継戦能力は高かった。

 

最初はジョセフが引率していたものの、後半になるとすぐに落ちるようになったので紆余曲折してたどり着いた主力弓矢部隊。回避が高い奴が出てきたら出します。シールドシューターは前衛に立てて回復もできて火力もあるのでなかなかズルいと思います。あとフェザーボウはアルビオンの敵で出てきて死ぬほど腹の立ったシャインニング(攻撃直前に暗闇付与)が味方になってもあほみたいに強かったので許した。これでずいぶん安定しました。アーマリアは強いんだけど行動の遅さをカバーしないと全部受けてから反撃になるので難しいところ。ロルフのブレイブスキルのアローレインは与ダメが高く中盤から終盤まで困った時に良くお世話になりました。実はマップ攻撃が結構強いこのゲーム、逆にアローレインやドラグーンダイブを使われたときに壊滅しかかることが何度かありましたが。

 

長らく余りもの部隊だったのですが、近隣住民にお菓子を作って配ろうとしてたお茶目な城主様(ジェローム)が仲間になってバランスが取れた結果主力級に。火力面は当たればデカいランツクネヒトで回避が高くない敵ならかなり汎用的にがんばってくれました。ワーウルフはこの編成では輝かないものの他に入れるキャラがいなかった。なるべくネームドキャラで闘おうとは思っていたので。