14-8-12

先週はるろうに剣心の京都大火編を見に行ってきました。
相変わらずというか前にも増して殺陣のキレの良さと次から次へと進んでいくテンポで、見ていて飽きること無く面白い映画でした。そして何より、るろ剣の実写を確かにやっているのに、画として違和感がないというのが凄いなあと思います。佐藤健の剣心はもう完璧に剣心だし、藤原竜也の志々雄の説得力も素晴らしいし。翁と蒼紫もまた素晴らしかったし。マンガの設定をそのままやっているはずなのに、なんとなくそんな明治時代もあったような気にさせる、志々雄一派が暗躍していたんじゃないかと思わせるようなリアリティのもたせ方。必殺技使ったりするときだけ「んー?」となるのはまあご愛嬌で。
そんな感じで、謎の侍映画がハリウッドから生まれてくるくらいなら、これをもって海外向けにディスイズジャパニーズサムライムービー! と言ってしまっていいんじゃないかと思うくらい、すごく純粋に良く出来ていて面白い映画だと思いました。そして良い所で引いたので、9月の後編公開も楽しみ!

ヨハネスブルグの天使たち / 宮内悠介

ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ヨハネスブルグ戦災孤児たち、やり直される9・11、アフガニスタンを放浪する日本人、内戦状態のイエメン、エアポケットとなった団地の子どもたち。世界の五つの都市を舞台に描かれる五つの物語は、たぶん戦争だとか、テロだとか、宗教だとか、子どもたちだとか、そういうものが描かれていて、そして横糸を通すように日本製の歌うホビーロボットDX9の姿が、それぞれの場所で均質化された同じなのに、別のものとして存在している。
このお話、私には読んでも何だか全然分からなくて、何かのヒントになるかと思って帯を見たら『伊藤計劃が幻視したヴィジョンをJ・G・バラードの手法で描く』と書かれていてやっぱり全然分からなかったのですが、意味不明だから投げ捨てる! という感じではなくて、今まさに私は何か特別なものを見てると感じさせてくれるような不思議な読書体験でした。
そういう意味ではやっぱりここにあるのは何かのヴィジョンで、だから読んでいるというよりも観ている、作者の眼を通して作者が観ている何か大きなヴィジョンのおこぼれに預かっている、そんな風に感じます。そしてそのヴィジョンは多分、今ここでこの瞬間に私が見て聞いて感じているものから、大きく乖離してはいないだろうという直感だけはある、というか。とても高い塔が目の前にあって、途中雲がかかっていてどうやってこんなに高くなったのか全くわからないのだけど、各日に今立っているここから生えているのはわかる、みたいな感じ。
私にはこれを解釈できるだけのスペックは無くて、だからここに描かれる景色には何が欠けていて何があるのかも判然とはしないのですが、それでも断片的にみえる風景は決して捨て置けるようなものではない何かで、分からないなりに現在だとか、リアルだとか、未来だとか、何かそんな言葉をあてて呼んでしまっても良いんじゃないかと、そんな様に思うのです。