幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ / 木ノ歌詠

幽霊列車とこんぺい糖―メモリー・オブ・リガヤ (富士見ミステリー文庫)

幽霊列車とこんぺい糖―メモリー・オブ・リガヤ (富士見ミステリー文庫)

好み。それだけに惜しさを感じてしまうのは欲張りなのか。
大人になれない母親の世話をし続けて暮らす少女海幸と、秘めた過去を持つ芸術家の少女リガヤに出会うひと夏のガールミーツガール。
透き通っていて、肌触りの冷たい空気が作品全体を包んでいて、とても好み。そんな空気の中で紡がれる物語は、お互いに多くのものを抱えた少女二人の心の行方。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」が海幸にとって重要な作品として何度も取り上げられることからもわかるように、決して幸せな物語ではないのですが、その暗さすらも読感としては素敵に思えるのが不思議です。
冒頭から自殺を試みる海幸が抱えているものも大きいですが、それ以上にこの小説はリガヤの物語なのだと感じました。最後まで読んでから、改めて最初の方のリガヤの様子を見ると、この少女が心の中に隠してもっているものを思って、何とも言えない気分になります。
ただ、全体通して凄く好みではあるのですが、あと一歩と言うか、もう少しが足りてない印象。雰囲気も話のタイプも好みだからこその贅沢な注文かもしれませんが、海幸がリガヤに惹かれていく部分をはじめとしたキャラクター達の心の動きとか、細かい部分での繊細さが不足気味かなと。そして何より、展開にしても、キャラクターの動きにしても、話が組み立てられているという感覚を受けてしまうのがちょっと厳しいです。もう少し洗練されるときっと凄く良くなるのではないかなぁとか、やっぱり贅沢な悩みを抱えてしまうのでした。
満足度:A-