ダブルアーツ 2巻 / 古味直志

ダブルアーツ 2 (ジャンプコミックス)

ダブルアーツ 2 (ジャンプコミックス)

連載当時はこの作者は長編の物語を描くのは苦手なのかなと感じていたのですが、単行本で読むとそんなことは感じさせない非常に良いものでした。やっぱり打ち切りは惜しい作品と今更ながらに。
大きすぎる敵に、この先味方となるかもしれない存在が登場。村を離れ旅立つ2人+1人。シスターたちの在り方。自らの無力さに打ちひしがれ、強くなろうとするキリ。そんなキリの姿に、自分自身の考え方すら変えられていくエルー。そして進みそうで進まない2人の関係。非常に王道な物語が着実に進んでいる様は、読んでいて安心感があります。
その中でやっぱり魅力的なのは、キャラクターの感情の見せ方。瑞々しいという表現がしっくりくる感じで、お互い間に見える想いやりや感情のぶつけ合い、感情の高まりを描くのが上手いです。このどこか澄んだ雰囲気はこの作者の大きな魅力だと思います。そして回想になっているモノローグがまた効果的な感じ。どこまでも真っ直ぐなキリを始めとして、キャラクターたちも魅力的です。
ただ、その反面世界設定に関する話のように大きな話を見せるのはあまり上手くないというか、どこか2人、あるいは2人とその周りの人たちだけの狭い世界の話に閉じてしまっているような気も。閉じているからこそ手を繋ぎ続けている2人という描写が素敵に思える部分もありますが、世界の危機を招く奇病とその背後にいる謎の組織といったファンタジー的な部分はちょっと弱いのかなとも思いました。
とはいえ、独特の空気を持った素敵な作品だと思うことに変わりはなく。3巻でラストということになりますが、残り1巻楽しみに待ちたいと思います。