ひぐらしのなく頃に解 第三話 〜皆殺し編〜(下) / 竜騎士07

ひぐらしのなく頃に解 第三話~皆殺し編(下) (講談社BOX)

ひぐらしのなく頃に解 第三話~皆殺し編(下) (講談社BOX)

仲間を信じる。運命に抗う。それは単純で、だからこそ難しいこと。
何もかもが上手く行きかけていた「この」雛見沢という世界は、けれど鉄平の登場によって暗転しかけて。それでも、圭一が、そして部活メンバーが、雛見沢という村そのものを動かし、そして100年の呪縛にとらわれた梨花の心すらも変えていく。
諦めないこと。信じること。仲間に相談すること。奇跡は起こるのを待っているものではなく、自ら動いて、そして起こすものなのだというメッセージは少年マンガのようにシンプル。それでも、疑心暗鬼から惨劇を繰り返してきた雛見沢という世界を見続けてきた読者からしてみれば、たったそれだけのことで全ては塗り替えられて、それでもその「たったそれだけ」がどんなに得難い、特別なことであるのかと胸を打たれるものがあります。
そして何度も繰り返し訪れる絶望の中で諦めることに慣れきっていた梨花が、一筋の光を見つけ、たとえ届かなくても一度限りの「この」雛見沢を力いっぱい生きようとする姿が印象的。期待しなければ傷つかないという羽生の言葉はある意味では真実で、苦しんで苦しんで何もかも諦めようとして、それでも希望を捨てきれない姿を通じて見るからこそ、ともすれば陳腐になりそうなこのメッセージが特別なものと感じられるのだと思います。
後半で明かされるのは、雛見沢の真実と本当の敵の姿。この謎自体はこんなのありかと思うようなものではありますが、雛見沢という運命を打ち破る物語としては相手にとって不足なしなもの。この結末は勿論ハッピーエンドではないのですが、あと少しでこの運命の外側に手が届くという希望を感じさせてくれる終わり方だったと思います。
ただ、物語としてのパワーは文句なしなのですが、小説としてみると色々厳しいものも感じたり。相変わらず誰が喋っているのか分かりにくかったり、物語の根幹にかかわる謎を延々と地の文で説明したり、メッセージをあまりにも何回も直球の言葉で語っていたり、ちょっと歪な部分がある気がします。それでも十分引き込まれる物語ではあるのですが、それだけに気になってしまったりもする訳で。
とはいえ、謎もほぼ明らかになり、残すは反撃あるのみとなった最終話。この運命を、彼ら彼女らがどのように打ち破っていくのか、非常に楽しみです。