GUNSLINGER GIRL 11巻 / 相田裕

GUNSLINGER GIRL 11 (電撃コミックス)

GUNSLINGER GIRL 11 (電撃コミックス)

終わりの迫る義体第1期生たち。そしてついに姿を見せる、クローチェ兄弟が復讐を誓う宿敵ジャコモ。
ジャコモの立て籠もった塔への突入作戦がこの巻のメインになるのですが、これが凄い出来でした。クローチェ兄弟の執念、それを嘲笑うかのようなジャコモの戦術、使い捨てられる1期生たち、自分の道を自分で選ぼうとするトリエラの姿。そしてその物語を圧倒的な迫力で見せてくれる絵。本当にこのシリーズは巻数を重ねるごとに凄味が出てきているんじゃないかと思います。
そんな中でも印象的だったのは塔に突入するトリエラとビーチェの姿。義体であること。使い捨ての身であること。余命は短いこと。「条件付け」による服従。恐怖を知らないこと。闘うためだけの存在。
それでも、人に望まれ、自ら望み、生きるために戦うとトリエラが願うのであれば、人形の身であっても、それは誰よりも生きているのではないかと。全ては「条件付け」という檻の中で芽吹いた、籠の中の自由意思。でも、社会の中で、何らかの思想に染まって生きているのであれば、それは誰だって同じこと。操られているにしたって、奪われているにしたって、自ら決めて自ら勝ち取る道の価値に変わりはないなんて言えば、それは理想論に過ぎるのでしょうか。
GISとのやり取り、突入戦での覚悟、そしてそんなトリエラを守ろうとしたビーチェの姿に、ここにあるのがどんな地獄であっても、そのくらいの夢は見たっていいんじゃないかと、そんな風に思いました。こんな物語であっても、意思の力はこんなに輝くのかと。だからこその残酷さというのも、もちろんあるのでしょうけれど。
そして物語はクローチェ事件の真相へ。ジャンとジョゼを駆りたてる事件の謎、そしてヘンリエッタに訪れる異常。この先もどうしたって楽な話になるはずはないのですが、それでもどこかに光はあるのじゃないかと、そんな風に思った1冊でした。