純真ミラクル100% 3巻 / 秋★枝

仕事と恋が絡んで一層複雑な人間関係を見せてきた第3巻。
モクソンのツアーも成功に終わって、次の活動はモクソンとオクソンのパンダ絡みの期間限定ユニット「ソンソンガールズ(仮)」へ。シンガーソングライターとしての人気とアイドル的な人気を併せ持ったモクソンに、事務所として売り出し中なオクソンをバーターにしてアイドルユニット的な売り方をするというのがまたずいぶんと生っぽい感じですが、オクソンとの仕事を心の底から楽しみにしているモクソンを見るとそんなことどうでも良くなってしまうのがこのマンガの持ち味。
そしてそのユニット絡みで、所長の同期にして本社の人間で工藤に惚れているという吉澤が登場し、そこから芸能界的なあれこれと恋模様が一気に発展していきます。オフィスTからモクソン、オクソンを引きぬいて、そのまま事務所自体もお払い箱としたい本社の意思と、工藤、そして自分に全幅の信頼を寄せる所長を前に自身の割り切れない想いを抱えて、自分自身がどうすべきか悩みながら感情に流されていく様子が凄く丁寧に描かれていて切ないです。
そこに一途に所長を想う工藤、それに気付かないながら微妙に進展を見せる所長との関係、武市の存在と色々な要素が絡んで仕事も恋愛も混線模様。モクソンは工藤に対して踏ん切りをつけたみたいですが、そのモクソンへの二宮の想いは本物で、オクソンとモクソンとの間には芸能界に身を置く者同士としての関係以上の友情があったりして……と複雑に絡み合った人間模様が、きな臭さを伴った芸能界敵あれこれと一緒に描かれていて見悶えたりゾッとしたりと面白いです。
それでいて、周りの毒気を抜いてしまうモクソンを筆頭に悪い人はいない感じで、一歩間違えたら大変なことになりそうなシビアさを優しさと柔らかさで中和しているバランスはお見事。モクソンだけの話ではなく、大人たちの群像劇的な側面が強くなって、少女マンガ的なノリにトレンディドラマちっくな事をやっているような感じになっています。
そしてキャラクター的にはオクソンの器用貧乏な上に空気が読めすぎて報われなさそうな感じが好きです。しかしこんなに良い子なのに、どうして幸せになれなさそうな感じがするのでしょうか……。
そしてついに吉澤が切った最初のカード。色々な感情が渦巻いて突けば壊れそうだったバランスは大きく揺らぎだして、芸能界という戦場の中でこの先何が起きて行くのか。それでもモクソンたちならきっと大丈夫だと思って、続きを待っていたいと思います。