とある科学の超電磁砲 5 / 鎌池和馬・冬川基

妹達を2万回殺すことで一方通行をレベル6にするために続けられる実験。それを知ってしまった美琴が、その計画をつぶすために動いていきます。
超能力者(レベル5)であるが故に学園都市の暗部を象徴するような実験に巻き込まれることとなり、その能力を持つが故にその企みに対して単身挑むことができて、実際にある程度まで何とかすることができてしまう。ただ、それはどこまでも無茶で無理なことで、突っ込めば突っ込むほどに闇は深くなり、美琴は追い詰められていきます。自分の身から出た問題だから、誰にも頼れない。自分自身でなんとかするという発想は強い力を持った者の傲慢で、でもそんな発想で挑まざるを得ない事象にいたった元をたどれば、彼女がそれだけの力を持っているからで、美琴が超能力者であるという救われない宿命に追い詰められていくような物語。
そしてこのマンガのすばらしいところは、そんな追い詰められていく美琴の様子、そして一歩通行や原始崩しといった相手とのバトルを描くマンガとしてのクオリティの高さ。動いているところや止めの部分、台詞や表情の見せ方まですごく上手くて、それだけで一気に物語に引き込まれるような迫力がありました。
敵として登場した原始崩し達が、キャラクターとしては可愛く描かれていて、でもその素性は細かい事情には立ち入らず依頼された通りのことをする戦闘狂という辺りも、学園都市の闇を感じさせるような感じ。その闇に捉われて、底なし沼にはまっていくように追い詰められる美琴の様子は、その行動が救えなかった未来を知っているだけに読者としては見ていて辛くて、だからこそやっぱり、全ての闇を道理を捻じ曲げて吹き飛ばしてしまえた上条当麻というキャラクターの存在は、物語にとっても美琴にとっても、とても大きいんだろうなということも感じた一冊でした。