美少女を嫌いなこれだけの理由 / 遠藤浅蜊

美少女を嫌いなこれだけの理由 (このライトノベルがすごい!文庫)

美少女を嫌いなこれだけの理由 (このライトノベルがすごい!文庫)

見た目は美少女! 中身はおっさん! な金髪ツインテール吸血鬼幼女が全裸で歯を磨いているというシーン(イラストあり)から始まっていろいろどうしたものかと!
キャラクターは美少女で中身は〇〇な話というのは、オタク向け作品では割とバリエーションが多いように感じるのですが、この作品の場合それを押し進めて、「美少女という種族」を登場させるという荒業に。美少女という種族なので見た目は美少女ですが、老若男女存在するというミラクルに、美少女にはひとりひとり属性が付加されているという、記号的な美少女萌えを逆手にとったような設定が面白いです。本当に一番表面の部分にしか美少女的なものはなくても、イラストを見ると可愛く思えてしまう哀しさみたいなものも含めて。そしてそのせいで外見と口調含めた中身とのギャップに、読んでいて頭がくらくらしてくるという! というか母親が人間で、父親が美少女の人間と美少女のハーフってどういうこと……。
そしてこの美少女の生きる社会の世知辛さのギャプがまた。地方にやってきた美少女二人が主人公をマネージャーに誘って簡易美少女局をつくるも、成果とかコネとか諸々で親局に睨まれて定期の仕事を取り上げられて困窮したり、嫌がらせのように監査員を送り込まれてげっそりしたり。さらに、主人公のもとにやってきたサブさん(サブリナさん)、五郎八さん(いろは)さんの過去がうっすら見えたりすると、もはや何一つ美少女萌え作品ではなく、おっさん世界のお話になってこれはこれでまた面白かったです。
そこにさらに恋愛要素とかも混じっては来るのですが、美少女(おっさん)→美少女(本当に若い女性)への恋とか、それはそれで美味しいけど見た目はふたりとも美少女みたいな混沌。ただ、物語の運び方とか、文章とかそういう部分はかなり粗い感じで、ストーリー自体にはいまいちのりきれないものもありました。展開がなし崩し的というか、グダグダとしているうちになんとなく仲良くなって解決に向かって終わってしまったような感じが読んでいて盛り上がり辛くてどうにも。
そういう意味でネタとしての突き抜け具合を楽しむ作品という感じでした。ちなみに個人的に一番気になったのは、五郎八さんの背中の秘密的な意味で、五郎八さん(爺さん)と両家の坊ちゃんであったはずのサブさん(おっさん)二人がどうして出逢い、今の関係になって、職にあぶれて美少女局で働くようになったのか。そのあたりの人情と任侠な話はいつか読んでみたいと思いました。