六花の勇者 2 / 山形石雄

六花の勇者〈2〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

六花の勇者〈2〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

魔神を倒すための6人の選ばれし勇者が集まってみたら7人いたからさあ大変という前巻は、最後には7人目が判明してめでたしめでたしと思いきや最後の最後に驚きの展開に。
そしてそれを受けて始まるこの2巻は、さあどうなるのかと思っていたら冒頭からまさかの展開におもいっきりやられました。そう来るとは全くの予想外で、思わず「ええええええ」と。
そんな驚愕から始まったお話は、冒頭に描かれる衝撃、何故そこに至ったかというところが焦点に。書けば書くほどネタバレになるタイプの話なので詳しくは書けませんが、新たなる7人目という前巻の内容をすべてひっくり返しかねない要素を巧いこと処理しつつ、誰が七人目かという謎と冒頭の出来事に至る経緯を絡めながらの物語は読み応え充分という感じです。ただ、あまりにうまくこの中だけで処理しているので、個人的には1巻がもう一度ひっくり返るようなものが読みたかったかなとも思ったり。
物語としては、この巻ではモーラの壮絶な人生が印象的。聖者としての彼女、一人の母親としての彼女、そして今六花の勇者としてこの場に立っている彼女。ただ愚かしく人間であったそんな彼女の生き様は、痛ましくも苛烈で読んでいて気圧されるものでした。
さらには仲間内で続く疑心暗鬼、チャモの成長にロロニアの意外な一面、フレミーの恋する娘ぶりといった六花の勇者側の動向に、次第に明らかになってくる凶魔の内情。高い知能を持ち、人を喰ったような態度をとる凶魔の統率者テグネウが現れたことで、物語自体はより一筋縄では行かない状況になってきた感じ。凶魔を率いる3体の統率者、さらにそれに関わる最後の最後での、読者にとっての新事実で、この先の展開はより混迷を深めつつ、尚且つ7人目の謎はまだ続くというこの状況、次の巻がまた楽しみになります。
個人的には、このじりじりと締め付けられるような息苦しさと、みっともなくとも足掻き続けるような泥臭さはあまり好みではないのですが、それを気にさせないくらいシンプルで力強い面白さのあるシリーズだと思います。面白かった!