六花の勇者 3 / 山形石雄

六花の勇者〈3〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

六花の勇者〈3〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

「またあなたを、助けに行っても、いいですか」

六花の勇者の一人、騎士ゴルドフ。勇者たちがテグネウの脅威に晒され、未だ分からない7人目の問題を抱える中、仕えていた姫であるナッシェタニアが去りしばらく虚脱状態のようになっていた彼が、「姫を助けに行く」と突然別行動を初めて、という話。ゴルドフという不器用な騎士の生き方と、姫と騎士という他の何にも勝る二人の関係にやられるような一冊でした。
凶魔という存在に3つの派閥があること、そしてテグネウという策謀を巡らす凶魔が存在すること。それがこの物語を複雑にしすぎているのではないかと2巻を読んだ時は思ったのですが、その複雑な状況を御しきった上で、しっかりゴルドフの物語を描いていて脱帽。前半で残りの六花の勇者の立場から描かれるゴルドフの行動の不可解さ、そして四章、視点が切り替わって明らかになる彼の行動とその裏で暗躍していたものの全て。複雑に絡み合った思惑と、情報量の差異からくる見え方の違いをきっちりと描きながら、なおかつ最初から最後まで姫と騎士の物語として通された筋がとても良かったです。
助ける騎士と助けられる姫、ではないこの関係性は、ゴルドフを完全に掴んでいるナッシェタニアの信頼と悪女ぶりに、ちょっとゾクゾクするものがありました。そして、これは確かにこの刊行ペースでしか出ないけれど、これだけのものになるならいくらでも待つよなあとも。
最後に来て改めて状況が再整理されて、引きつながれた謎はさらに物事の根源、そして過去に迫るような形に。とにかく情報量の少なさから、ひたすらテグネウとドズーという二人の凶魔の争いの盤状で踊らされ続けている六花の勇者たちが、この後イニシアチブを握ることができるのか。未だ底を見せないテグネウも、何か大きな一手を持っているのではないかと思わせるドズーも、決して一筋縄行く相手ではないとここまでの話でわかっていますが、それでも何か一矢報いてくれることを信じて、この先の話も楽しみにしています。