モン・スール / きづきあきら

読むのに気合が必要で、ずっと積んでいたのですがようやく。
モン・スール」は全てが完璧に組み立てられた崩壊のストーリーにタブーを噛みあわせたような作品。兄と妹、いなくなった父親、二人だけの暮らし、気にかけてくれた兄の友人。そこから動き出すのは、兄の友人と小学生の妹が肉体関係をもって、それで崩壊していく人間関係の模様。じゃあ何が悪かったのかって、手を出したのはそれは普通に考えて「悪いこと」であって、じゃあそうなったのは? 妹の気持ちは? 父親が家を捨てたことは? その理由は? 兄は何をした? 彼らはそれぞれに何を考えた? と蓋を開くように溢れてくる感情は、どれもこれもそうなるしかなくてそうなってしまった悪趣味なパズルのようで。
それは誰が悪いといえるものでも無く思えて、けれどルールとしてその超えた一線だけは間違いなく悪かったと言える。だけど、この物語はそれが全てだったなんてとても言えない、むしろ何も知らずに勝手なことを言って全てを壊したのは被害者のように振る舞っている兄だったようにも思える。
描き足された後日談も合わせて、最期まで読んでもそういう後味の悪さが残り続ける作品でした。この描かれた感情の鋭さが、ダメなものはダメでこの作品を終わらせてくれないんだな、と。