安達としまむら 5 / 入間人間

前の巻からこれはあかんやつだと思ってはいましたが、ここに来ていよいよ危ういんですが大丈夫ですかねこれ。巻を重ねるごとにここ数巻で最高の危うさ! みたいなボジョレー的宣伝文句が浮かびそうな雰囲気を漂わせつつ、いつ爆発してもおかしくない時限爆弾みたいなものだよなあと。主に安達が。
しまむらが割と安達の方へ傾くかなと思わせた前巻ですが、冒頭に差し込まれたif幼稚園話が明確に描いている通り、言われたり誘われたりすればそっちに行くだけなんですねこの子。安達に誘われれば安達と遊ぶし、樽見に誘われればそっち行くし、妹の方もヤキモチ焼くのでかまってあげるし。それが誰にでもいい顔とかそういうのではなくて、ただただ島村抱月であり続けるだけというか、ひたすらにフラットなだけ。他人に深入りしないというか、どこまで興味があるのかも若干怪しい。主体性がない訳ではなくて意見は率直に話すのも、多分そういうところからくる、ある意味で安達以上の個人主義者。
でもそれってただひたすらにしまむらを求め続ける安達との食合せめっちゃ悪く無い? というのがいかんなく発揮されたのが夏休み前編である今回でした。樽見に誘われたので妹とヤシロを連れて花火大会に行ったしまむらとそれを目撃しちゃった安達。しまむらはそれを安達に対してはそこまでどうとも思っていなくて、安達の方にとっては世界を揺るがす一大事。そこからの電話で嫉妬を爆発させる安達、しまむらの「面倒くさいなぁ」、喧嘩したと落ち込む安達と、後日電話すれば何も気にしてないようなしまむらというこの流れ。安達にとっては島村が全てで、視野の狭さと入れ込み具合がちょっとどうしようもないところまで来ているけれど、しまむらにとってはただフラットに接している友達の一人でしか無い。であれば極めて真っ当な反応なのですが、今の安達に対してそれはアカンでしょうと。
そしてそこから最後のトドメとばかりに提案するのが「いろんな人と仲良くしたら良い」でおまけに「必要以上に強制はしないけど」って。もう完全に対相手の距離感のとり方が違うということが分かるというか、仲良くしているように見えて、これとんでもないディスコミュニケーションだという感じです。
ただ、しまむらが安達に傾けばそこにあるのは行き詰まっていく相互依存だろうと思うので、変わるなら安達が変わるしかなくて、言っていることは正しいと思うのです。で、それを安達が自覚した自分の言葉で真正面から、自分がしまむらだけを見て、しまむらが自分だけを見ればいいと否定するラスト。ちょっと見えた軟着陸の可能性を即潰しに来るとはすごい事するなあと思いつつ、現状安達さんにしまむらさんが刺される案件しか未来が見えないのですが果たして。