最後にして最初のアイドル / 草野原々

 

最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)

最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)

 

 オタネタを起点にして矢継ぎ早につぎ込まれるSFガジェットを推進剤に進化の果てまで突っ走った末に待ち受ける宇宙スケールの起源。壮大で強固な与太話というか、解説の通り悪いオタクの大喜利の延長線上というか、とにかく最高に現在って感じで、最高に頭の悪い賢さのある短編集です。

元々がラブライブのにこまき二次創作である「最後にして最初のアイドル」も、ソシャゲを題材にした「エヴォリューションがーるず」も、ノリとやっていることはだいたい同じなのですが、個人的には後者が好み。

ソシャゲ廃人が今流行りのトラック事故異世界転生した先はソシャゲを模したフレンズたちの世界。海の底の単細胞生物からガチャを回して生体器官を得て進化していく中で、他のフレンズたちを殺してポイントを奪い合う激しい生存競争あり、カードを二枚重ねることによる爆発的な進化があり、フレンド機能によってできた仲間たちの存在があり。そして物語は陸上へ、さらに宇宙へ、そしてこのソシャゲ世界の真理へと至りながら、最終的にまどか☆マギカして、良い感じの百合に着陸します。全然何を言ってるかわからないかもしれませんが、だいたいそんな感じ。なるほどこれがワイドスクリーン・百合・バロック……。

「アイドル」「ソシャゲ」ときて「声優」をテーマにした冒険SF色の強い「暗黒声優」まで含めて万事そんな感じなので、とにかく好きな人は好きだし、分からない人にはさっぱり分からないだろう一冊。ただそれでも、まさに今の時代に悪いオタクをしている共犯関係みたいな、頭のおかしさを最大にして全力で突き抜けろみたいな、そういうビッグウェーブに乗っている楽しさがある作品でした。正直描写は結構グロテスクで苦手な部分も多いのですが、嫌いじゃないです、こういうの。