【小説感想】少女文学 第一号

f:id:KeiKomori:20190526175105j:plain

5/12のCOMITIAで頒布された「少女小説」をテーマにした同人誌。

私は「少女小説」というジャンルに触れてはこなかったので、ここで『あなたが愛した「少女小説」』というテーマで書かれている作品を読んでも、正直分からない部分はあるし、こんなに色々なタイプの作品があったのだなあと思うくらいしかできません。

でも、誰かにとってそれが何であったのか、それを書き手の側から書いたのが紅玉いづき「ぺぺ、あなたの小説を読ませて。」であり、読み手の側から書いたのが七木香枝「あなたと彼女たちについて」なのだろうと。

出会った「神様」や「彼女たち」。長く人生と共にあり、あるいは人生そのものとなったそれ。福音であり、ある意味では呪いのような、そういう言葉でくくること自体が野暮なのかもしれないもの。「ありがとう」と「幸せ」の言葉で結ばれるそれぞれの作品を読んで、なんだか、この本を手にとって良かったなと思いました。

 

それぞれの作品の中では小野上明夜「白き寿ぎ」が、なんとも底意地の悪いというか、素敵に趣味の悪い話で好き。ああこれはもしかしてそういう話なのでは……というところから、やっぱり! と思って読んだ最後に……という仕掛けがとてもひどい(褒め言葉)作品でした。

逆に、ああこれはもうしかしてそういう話なのではという期待から、待ってました! の方向に振れるのが神尾あるみ「アミルと不思議な青い指輪」、木間のどか「ブルージャスミン」。どちらもファンタジーな国の話を背景に、前者は冒険のワクワク感が、後者は恋へのドキドキ感があって良かったです。

それから栗原ちひろ「黄金と骨の王国 ~半竜人と死せる第一王女の章~」は更にもっとがっちりとしたファンタジーという印象。この世界の、もっと色々な話も読んでみたいなと思いました。